青枯病の症状
「急に株全体が萎れた」「葉は枯れずに緑色のまま」「スポット的に畑の数株が萎れている」などの症状が現れたときは青枯病を疑いましょう。株全体の症状
青枯病に感染すると葉や葉柄が急に勢いを失ったように萎れ、その後株全体が立ち枯れます。特徴的な被害部位
茎の根本付近を切断してみると、導管が褐変して乳白色の菌泥がみられることがあります。▼植物の病気の症状についてはこちらの記事もご覧ください
青枯病の発症原因
青枯病とは細菌(バクテリア)が原因で発症する病気です。多犯性の病害なのでトマトやナス、ジャガイモ、イチゴ、ショウガなど多くの作物に感染します。名前 | 青枯病 |
菌名 | Ralstonia solanacearum |
分類 | 細菌 |
発生時期 | 夏 |
発病適温(地温) | 25~37℃ |
青枯病は土壌伝染性病害
青枯病の病原菌は、感染した前作の残渣(ざんさ)や根の周囲の土壌で生存して伝染源となります。土中の病原菌が新たな植物の根の傷口に侵入して、導管で増殖し、株を萎れさせます。さらに青枯病に感染した根から病原菌となる細菌が排出されて、水で移動し、隣接する株の根から周囲の株へと感染が広がっていきます。※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。
青枯病が発生しやすい条件
青枯病の病原菌は主に根の傷口から侵入するため、センチュウ類やコガネムシ類の幼虫の食害、移植や根切り作業など、根が傷付く場合には感染の可能性があるので注意が必要です。▼センチュウのことならこちらをご覧ください。
▼コガネムシのことならこちらをご覧ください。
高温
青枯病は比較的高温を好むので、地温が高くなる夏ごろに発生しやすくなります。地温が20℃を超えると発病しはじめ、25~37℃で激しく発病します。水分
土壌水分が多い条件下では青枯病の病原菌が活発に動き、また数年間生存することも可能になります。反対に乾燥に弱い性質があり、乾燥した土や種子の表面では数日しか生存することができません。
青枯病とほかの病気の見分け方
青枯病と同様に全身が萎れて立ち枯れる病気は、根腐萎凋病(ねぐされいちょうびょう)、立枯病(たちがれびょう)などがあります。ほかの病気と青枯病を見分ける方法は、感染した茎の根本付近を切断して水を注いだガラスのコップに入れます。導管から白い汁(菌泥)が筋状に出てきたら青枯病に感染しています。
▼根腐萎凋病や立枯病のことならこちらをご覧ください。
青枯病に感染する主な植物
青枯病は野菜類、花かき類など幅広く感染する病気です。トマト、ミニトマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ、ショウガ、イチゴ、トルコギキョウなどに発生します。ここでは青枯病が問題となっている主要な作物とその症状を紹介します。
▼ナスやピーマン、ジャガイモ、イチゴの病気のことならこちらをご覧ください。
トマト、ミニトマト
葉や葉柄の一部が急に勢いを失ったように萎れます。曇りの日は戻ることもありますが、その後株全体が萎れて立ち枯れます。▼トマト・ミニトマトの病気のことならこちらをご覧ください。
ショウガ
地上部では、はじめ下位葉が黄化、萎凋(いちょう)し、すみやかに上位葉に進み、やがて株全体が枯死します。症状が進むと茎の地際部は水浸状に軟化腐敗して倒伏します。塊茎(かいけい)では表面がやや水に浸したように変色し、切断すると維管束が褐色〜黒色に変色しています。
病気になった種塊茎が伝染源となるため、発病圃場の塊茎は種塊茎として使用しないでください。
※萎凋とは、植物が萎(な)えて萎(しぼ)むこと。
※塊茎とは、地下茎の一部が養分を蓄えることによって肥大した部分。
▼ショウガの育て方ならこちらをご覧ください。
青枯病に有効な防除方法
青枯病に有効な農薬はありません。防除は圃場の管理で行います。※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。
1. 前作の残渣の処理
前作の植物残渣などに青枯病菌が付着している可能性があります。残渣は圃場外に持ち出して処理します。2. 土壌の入れ替え、消毒
前作に青枯病が発生した圃場、発生が心配される圃場は土壌を消毒するか新しい土を入れます。太陽熱消毒は、1年で最も暑い時期(7月中旬から8月下旬くらいまで)に圃場にたっぷり灌水した後、透明のポリマルチを土の表面に隙間が無いように被せて、30日程度放置してください。
▼土壌消毒のことならこちらをご覧ください。
プランター栽培では、新しい土と入れ替えるか、青枯病が発生した土に水をたっぷり含ませ、透明のビニールで包み、太陽の熱を利用して消毒します。
▼プランターの培土処理のことならこちらをご覧ください。
注意!青枯病菌は地中深くでも生存できる
青枯病菌は土壌表面から約1mの深さにまで生存しています。太陽熱消毒は土壌の表面(深さ約10cm)の殺菌にとどまるため、下層から青枯病菌が上ってくる可能性があります。善玉菌(ぜんだまきん)を含んだ微生物資材の使用
土壌中で青枯病菌が増える前に、土づくりを助けてくれる善玉菌を含んだ微生物資材を投入すると速やかに増殖して、病原菌が生息する場所を奪う効果があります。EM菌や光合成細菌など、善玉菌とされる微生物資材などを作付け前に土壌に混ぜることをおすすめします。 EM生活 EM1号
微生物を天然材料で複合培養した土壌改良材です。
・内容量:1L
・原材料:精糖蜜、オーガニックシュガー、米、米ぬか、フスマ、大豆、にがり、有機JAS醤油、セラミックス、光合成細菌、乳酸菌、酵母菌、糸状菌、放線菌
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土壌に散布することで連作障害を素早く改善し、豊富なビタミンとアミノ酸で生育促進をさせます。
・内容量:1L
・原材料:水、牛糞、光合成細菌
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3. 水はけの良い圃場づくり
土壌の水分が多いと、根傷みを起こし傷口から青枯病に感染しやすくなります。畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入して、水はけの良い土づくりをしましょう。
▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。
4. 青枯病に強い品種、台木の利用
青枯病に抵抗性、耐病性の品種を使うことも効果的です。接ぎ木をする場合は青枯病に強い台木も各種販売されています。作型に合わせて使用してみましょう。
【品種の例】
トマト:桃太郎サニー、桃太郎8 (タキイ種苗)など
【台木の例】
・トマト台木:グリーンセーブ、グリーンガード(タキイ種苗)
・ピーマン台木:台パワー(農研機構)、バギー(タキイ種苗)など
5. 連作をしない
ナス科の作物を連作すると青枯病菌が増殖してしまうため連作は避けましょう。▼連作障害のことならこちらをご覧ください。
6. 剪定ナイフ、はさみ、手指の消毒
青枯病は汁液で感染します。作物の管理(剪定、収穫など)に使うはさみやナイフや、手指は、定期的に消毒してください。1ライン進んだら消毒、など決まりを作っておくと忘れにくく、被害を最小限に抑えられます。病気の発生が見られた場合は、一株毎に消毒してください。青枯病発症後の対応
青枯病の感染が確認された箇所はただちに取り去り、除去したものはほかの植物に触れないようにビニール袋に入れて圃場外に持ち去ります。管理作業によって周辺の株にも伝染している恐れがあるため、はさみや手指は上述のビストロンで念入りな消毒を行いましょう。
青枯病の人体への影響は?
基本的に青枯病は植物の病気なので、人が触れたり食べることで感染することはありません。しかし、青枯病に激しく侵された農作物は、植物自体が病気に対抗して毒素を生成している可能性があるので(ファイトアレキシン、アレルギー原因タンパク質など)、人体に影響がまったく無いとも言いきれません。
青枯病対策に何より大事なのは土壌改良
青枯病は発病してからの防除は難しいため、発症しないための環境づくりが大切です。地温が高くなる夏場に栽培する場合は特に気をつけましょう。青枯病は多湿で発生しやすい土壌からの病気です。青枯病が発生した圃場、発症が懸念される圃場では、土壌の消毒、微生物資材を投入することもおすすめです。また、根傷みしない多湿にならない土壌づくりを心がけましょう。
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