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見かけによらず害獣!農家を悩ますアライグマ被害と駆除方法


農家への被害の深刻化が心配されるアライグマ。畑を荒らして農作物を食べたり、屋根に侵入したり、ここ数年は住宅街へのこんな被害も多発しています。そこで、アライグマを駆除する方法を紹介します。
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出典:pixabay
近年、民家に住み着き、糞尿などによる被害をもたらすネズミやイタチやハクビシンなどと同様、アライグマによる害獣被害が増加しています。畑の農作物の被害も深刻ですが、水生動物や昆虫などなんでも構わず食べてしまうアライグマによって、生態系への影響も懸念されています。今回は外来生物であるアライグマ被害と予防・駆除方法についてご紹介します。

かわいいアライグマによる家屋や農作物の被害が多発

出典:PIXTA

農作物被害は3億円超!

現在、国内で急速な分布を広げている「特定外来生物」に指定されているアライグマの被害は深刻です。2016年度には全国で約3億3千万円という巨額の農業被害が発生しているほか、サギ類のコロニー(集団繁殖地)の破壊や国の天然記念物であるサンショウウオの補食など、アライグマによると考えられている生態系への影響が報告されています。

 大量のフンにカビが生えて悪臭が!天井の床が抜けることも

出典:写真AC
民家にも侵入するアライグマ。身近な被害でいちばん多いのが、糞尿による家屋の被害です。アライグマは、自分の巣の周囲や、同じ場所で排泄をする習性があり、放っておくと家の中にどんどんフンが溜まります。さらに、その大量のフンにカビが生えて強烈な悪臭を漂わせます。

またフンの重みで屋根裏や天井の床が腐り、尿による天井にシミができます。これを放っておくと天井から尿が染み出して水漏れのように落ちてきたり、さらにひどくなると糞尿によって天井が腐り、その重さに耐えきれず天井が落ちてくることもあるようです。

アライグマの生態とその特徴

出典:pixabay

雑食性

アライグマは雑食性なので、なんでも食べます。民家や畑のある場所ではトウモロコシやイチゴ、トマトやスイカなど農作物を荒らすことが多いですが、木の実、果実、穀類なども食べます。また植物のほか、カエルやサンショウウオなど両生類、爬虫類、カブトムシなどの甲虫を含む昆虫類などを食べることも。

生息する場所を問わず、例えば池や川の近くに住む個体はザリガニを好んで食べたり、ブラックバスやナマズ、ウナギなど魚類を食べたりする個体もいます。
イノシシやシカなどの死骸肉も食べますし、人間が好んで食べるマヨネーズや揚げもの、ポップコーンのようなスナック菓子などを生ごみからあさって食べる姿も目撃されています。このような幅広い雑食性のアライグマは住宅街や市街地でも構わずたくましく生きていけるのです。

夜行性だが昼間にも活動することも

出典:PIXTA
アライグマは基本的に夜行性ですが、昼間にも活動することもしばしば。昼間は、木の穴や屋根裏・廃屋などにいることが多いです。

全国各地に生息

アライグマは森林、湿地、農地、里山などのほか、住宅地にも生息しています。自分で巣を掘ることはなく、他の動物が掘った穴や 樹洞(木にあいた穴)のほか、神社・寺、人家の屋根裏、民家の納屋や物置などを利用して巣や寝床にすることがあります。
現在日本国内では、北海道から九州まで、日本各地に生息しています。

繁殖力が高く、すぐに増える

1年に1回、春(4月~6月)に出産します。1回に生まれるのは平均して3~5頭ほど。一夫多妻制で雌が子育てをします。

アライグマにとって一番の天敵は人間です。アライグマの死因のうち、8割近くは狩猟や駆除、1割は交通事故などです。また他国ではオオカミやピューマ、ワシミミズクなど天敵が存在するものの、日本にはこのような動物が生息していません。アライグマ本来の繁殖力の高さに加えて、天敵がいないことが近年日本国内での急激な増加につながっています。

間違えやすいアライグマとタヌキの見分け方

出典:写真AC
ペットとして持ち込まれた外来種のアライグマと従来日本に生息しているタヌキは、一見、姿、色などが似ており、誤ってタヌキを捕獲してしまうと罰金になる可能性があるので注意しましょう。

アライグマの特徴としてわかりやすいのは、「しっぽ」と「ひげ」。アライグマのしっぽには黒い輪っか模様がありますが、タヌキは模様がなく太いしっぽです。またアライグマのひげの色が白いのに対して、タヌキのひげは黒いのが特徴です。

アライグマを駆除するには?

出典:写真AC
アライグマの捕獲には行政の許可が必要です。また、カゴや強度の高い金網の準備といった手間がかかる部分が多いです。そこで、ここでは駆除業者に依頼した場合の流れをご紹介します。

現場の調査

通気口や換気扇の隙間など、狭い穴でも猫のように柔らかい体で侵入できるアライグマ。
まずはアライグマの被害や侵入経路、巣の場所を徹底調査します。調査後、見積もりを出して駆除作業を開始します。天井に点検口がない場合は、点検口をつくるサービスを行っている業者もあります。

捕獲や追い出し

アライグマを捕獲するには、「箱ワナ」といって専用の大きく頑丈なカゴを使って捕獲します。カゴの中に餌を置き、そのエサを取ると、入り口が閉まる仕組みです。最初の調査でわかった行動パターンから、もっともかかりやすい場所に捕獲カゴを設置します。

侵入経路の封鎖

侵入された換気口の処理です。簡単なふさぎ方ではアライグマに破壊されてしまうので、パンチングメタルという強度の高い網で隙間をふさぎます。

アライグマがいた場所の消毒・天井の防腐処理

天井に腐敗や汚染の被害がでていることもあります。アライグマの糞尿から出る菌やウイルスなどを薬剤で消毒・防腐処理を行います。赤ちゃんや小さなお子様がいる場合は、薬剤に安全なものが使われているかを確認しましょう。

私たちが気をつけるべきこと

出典:PIXTA

アライグマは勝手に捕まえない

アライグマは、法律で定められた特定外来生物の一種であり、鳥獣保護法で「狩猟鳥獣」に指定されています。飼育するのはもちろん、捕獲する場合も、獣害による被害を確かめたうえで許可を申請してからでないと駆除できません。

捕獲用の罠も「狩猟免許」がないと勝手に使ってはいけないなどと、日本国内の狩猟法により決められています。これを知らずに自分で勝手に捕まえたり駆除したりすると、罰せられる可能性がありますので注意が必要です。

アライグマやフンには絶対に触らない

アライグマの毛や皮膚には重症熱性血小板減少症という重大な病気を引き起こすマダニ、体内には回虫という寄生虫が潜んでいることがあります。回虫は重度の脳障害を引き起こす可能性があり、もしなんらかのきっかけで体内に入ってしまうと非常に危険です。回虫のほかにも致死率100%の狂犬病の病原菌やウイルスに感染すると命の危険につながります。

フンはもちろん、アライグマ自体も絶対に触らないでください。また、アライグマに限らず鳥獣が食い荒らしたような跡がある野菜などはむやみに触らず、すぐに消毒・処分するようにしましょう。

襲われる可能性も!興味本位で近づかない

出典:pixabay
アライグマは気性が激しく、これまで飼い犬を襲った事例もあることから、人を襲うことも十分にありえます。よく見ると犬歯も鋭く、鋭い爪も持っています。手足の力が強く、5本指の前足はとても器用です。 動物園のオリを抜け出せる個体もいるほどで、実際、飼育施設から逃亡したことも、アライグマ拡大の一因となっています。

アライグマを寄せ付けない方法はあるの?

一度駆除をしても、その後、またアライグマがやってくることも。再び寄せ付けないためには、以下の3つの対策をとっておくことをおすすめします。

対策1. アライグマのエサとなるものを排除・保護する

ペットのエサの食べ残しを放置しない、生ごみはできるだけ外に出さず早めにゴミステーションに持っていくなど、ちょっとした配慮を心がけることが大切です。軒下に玉ねぎや干し柿などを吊るしている民家もありますが、これらがアライグマやほかの害獣を近づかせる要因になることも。トウモロコシや米などの穀物類を小屋などに保管する場合も、侵入できないような工夫が必要です。

対策2. 侵入口をなくす

民家にとっての害獣でもあるイタチやハクビシンなどもそうですが、テレビでよく「まさかこんなところから入るとは…」というような隙間から侵入してすみついているのを見ます。例えば軒下の換気口、床下の通気口、換気扇など。

アライグマは意外にも木登りが得意。5本の長い爪を生かして7~8mの高さでもあっという間に駆け上ります。屋根裏にもするっと入り込みます。侵入しそうな穴は頑丈な金属製や電気柵でしっかりとふさぎましょう。

対策3. 臭いで侵入を予防する

出典:写真AC
アライグマは燻煙剤や木酢液、ハッカ油の臭いのほか、天敵であるオオカミの尿を嫌います。畑の周りにこうした臭いをつけておくと食い荒らし対策になるでしょう。臭いのほか、青色のLEDストロボなどの光、オオカミの声などを流すことも有効だとされています。

周囲と協力して捕獲するのも大事

アライグマの予防法を守ることはもちろんですが、畑などの広い敷地を食い荒らすものは、自分一人だけでなく周囲と協力しながら捕獲、駆除作戦を練り、実行するとより効率のよい捕獲につながります。気配を感じたら早めに実行しましょう。


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この記事の筆者:
printemps117

家庭菜園を始めて5年ほど。夏になるとカラフルなパプリカを木のように実らせたいと思い、試行錯誤中。 今年は、ころたんメロン、星・ハート形きゅうりなど、子どもも大人もわくわくするような野菜の栽培にも取り組んでいます。

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