症状からわかるネギの病気


ネギは葉(葉身、葉鞘)に病気が発生します。本記事では、圃場でよく見られる葉身や葉鞘に出ている症状から、病気を推測できるように、葉の病斑(斑点やカビ)や、葉の萎れ、腐れなどの症状の順に紹介します。
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ネギ栽培

Illustration:rie
栽培しているネギの生育が思わしくない、萎(しお)れる、斑点が出ている、そんな場合は病原菌に感染しているかもしれません。病気は早期に発見し対策をすれば、重症化を防げます。
育苗時期のネギや、圃場(ほじょう)でよく見られるネギの葉の部分に出ている症状から病気を推測できるように、分かりやすいイラストで紹介します。

▼ネギの栽培方法についてはこちらをご覧ください。


▼植物の病気についてはこちらもご覧ください。


ネギの葉(葉身、葉鞘)に発生する病気

ネギの緑色部分の「葉身(ようしん)」や、白色の「葉鞘(ようしょう)」の症状から推測できる病気を紹介します。

ネギの葉に病斑(斑点やカビ)

ネギの葉(葉身、または葉鞘)に斑点やカビが出ている場合、病原菌に感染している可能性があります。
まずは病斑の形、色、特徴を確認しましょう。

べと病

ベト病におかされたネギの葉
Illustration:rie

【症状】
葉身にぼんやりとした大きめの病斑があらわれ、次第に暗緑色~暗紫色に変わります。また、多湿時には表面に白~灰色のカビが生じます。
症状がすすむと、灰白色の葉枯れ症状となって枯死します。
【予防と対策】
べと病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)


黒斑病

黒斑病におかされたネギの葉
Illustration:rie

【症状】
はじめに白色の小さな斑点が生じ、やがて病斑が円形〜紡錘形に拡大して、黒色〜黒褐色の丸が重なったような輪紋状の病斑を作ります。病斑が大きくなるとその部分から折れやすくなって、枯死することがあります。
また、灰色ですす状のカビが生えたり、病斑内部に黒色の粒(分生胞子)ができたりするなどの症状が確認できることもあります。
【予防と対策】
黒斑病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)


葉枯病

葉枯病におかされたネギの葉
Illustration:rie

【症状】
葉枯病は3つの症状が発生します
・葉の先端が褐色に枯れる葉先枯れ症状が発生します。
・葉身の中央部に楕円形の病斑を作り、黒色のカビが生えます。黒斑病にもよく似た症状です。
・生育後期には、葉身の中心葉が不規則に黄化し、モザイクのような黄色斑紋病斑を作ります。
特に黄色斑紋病斑が発生すると、商品価値を失い被害が大きくなります。
【予防と対策】
被害植物の残渣(ざんさ)は伝染源になるので、圃場の外に持ち出して処分します。株間は適切にとり、風通しの良い圃場に保ちます。
土壌pHが低いと葉枯病が発生しやすいため、pHは適正域の6.0~7.0に保ちます。窒素過多や肥切れも発病の原因となるので、適切な施肥を行いましょう。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。

▼土壌の肥料濃度がわかる「ECメーター」のことならこちらをご覧ください。

さび病

さび病におかされたネギの葉
Illustration:rie

【症状】
葉の表面に橙黄色の小さな斑点を生じ、後に盛り上がり、黄色~赤褐色の粉状の病斑(夏胞子堆)を形成します。やがて病斑の表皮が破れて胞子が飛散し、伝染していきます。気温が低下すると病斑は暗褐色 (冬胞子堆)に変色します。
主に春と秋に発症し、夏と冬は一時的に終息します。
【予防と対策】
さび病 | 防除方法とおすすめの使用薬剤(農薬)


小菌核腐敗病

小菌核腐敗病におかされたネギの葉
Illustration:rie

【症状】
葉鞘に淡褐色の病斑ができて、徐々に腐敗し、病状が進行すると縦に亀裂が入ることがあります。その後、2~3mm程度の形の定まらないやや盛り上がった黒色の病斑(菌核)が多数できます。
葉身は黄白色の小斑点や葉先枯れが生じて、多湿時には灰色のかびを多数生じます。
葉鞘と葉身に発病しますが、どちらか一方に発病する場合もあり、葉鞘に発病した方が被害が大きくなります。
比較的低温を好み、晩秋~春に発生しやすい病気です。
【予防と対策】
病原菌は菌核という形で土の中や、枯れた作物で生き残り、気温の低下とともにネギに感染します。被害植物の残渣は伝染源になるので、圃場の外に持ち出して処分します。
湿度が高いと発生しやすいため、圃場の排水を良くします。また窒素が多いことも発病の原因となるため、適切な施肥を行いましょう。


えそ条斑病

えそ条斑病におかされたネギの葉
Illustration:rie

【症状】
葉身がぼんやりと黄色く色が抜け、その後淡黄色~白色のえそ条斑を生じます。症状が進むと大型病斑となり、葉がねじれる場合もあります。
アイリス黄斑ウイルス(IYSV:Iris yellow spot virus )というウイルスが原因で、ネギアザミウマによって媒介されされるので、えそ条斑の周囲にはかすり状のアザミウマの食害痕があります。
ネギアザミウマの幼虫時に、病原菌に感染した植物を吸汁することにより保毒して、次々とウイルスを伝搬していきます。
【予防と対策】
病気を治療できる農薬は無いため、感染予防のためにアザミウマ対策を行いましょう。
トルコギキョウ、アルストロメリア、タマネギ、ニラにも寄生するので、畑の周囲にこれらの作物がある場合は注意します。また雑草も増殖源となるため除草をしておきます。

▼アザミウマの対策はこちらをご覧ください。


ネギの葉の萎れ、腐り

ネギの葉身や葉鞘部分に斑点やカビが発生しているだけでなく、萎れていたり、折れたり、腐れたりしている場合は以下のような病原菌に感染している可能性があります。
まずは病斑の形、色、特徴などから、萎れや腐る病気の特定をしていきましょう。

軟腐病

軟腐病におかされ葉が萎れて腐ったネギ
Illustration:rie

【症状】
葉身と葉鞘に発生し、はじめ水の浸みたような病斑を生じて、腐敗します。
地際部に発生した場合、軟化腐敗して、地上部は生育不良となります。このような株の腐敗部分は独特の強い悪臭がします。
【予防と対策】
軟腐病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)


白絹病

白絹病におかされ葉が萎れ腐れたネギ
Illustration:rie

【症状】
主に地際部から発病して、絹糸のような光沢のある白い菌糸(カビ)が根元やその周辺の土壌にはびこります。根や茎は水に浸したように軟化、腐敗します。下葉から黄化した後、症状が進むと株全体が枯死します。
地下部の浅い部分から根元付近が水で浸したように柔らかくなり、やがて白色の菌糸が生えて、菌糸の中に粟(あわ)粒大の淡褐色の菌核が多数形成されます。
【予防と対策】
白絹病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)


白色疫病

白色疫病におかされ葉が萎れ腐れたネギ
Illustration:rie

【症状】
はじめ葉身に、青白色でぼんやりとした大きい病斑が現れ、急激に拡大し白色に葉が枯れます。葉は変色した部分で折れて、症状が進むと立ち枯れます。
感染力が強く、急激に周囲に広がり大きな被害となることがあります。同じ種類の病原菌で、疫病は高温期に多く発生し、白色疫病は低温の時期に発生する傾向があります。
【予防と対策】
水はねなどによって周囲に感染していきます。土壌の排水を良くして、降雨の前後は予防的に薬剤を散布するなど注意が必要です。
また窒素が多いことも発病の原因となるため、適切な施肥を行いましょう。


萎縮病

萎縮病におかされ葉が萎れ、腐ったネギ 
Illustration:rie

【症状】
モザイク状や筋状に葉の色が抜け、葉がぼこぼこと波状に変形する、生育が抑制され、株全体が萎縮するなどの症状が現れます。
【予防と対策】
ウイルスが植物体内で増殖して発生する病気です。ウイルス病に効果のある農薬は無いため、感染予防に努めましょう。
アブラムシ類が伝染源となるため、アブラムシの増殖を防ぐ対策を行います。

▼アブラムシ類の対策はこちらもご覧ください。

ネギの発芽時、幼苗期に発生する病気

植えて間もない時期に発生しやすい病気を紹介します。

ネギの葉の斑点、カビ

苗や若い葉に斑点が出ていたり、カビが生えていたりすると病気の可能性があります。

疫病

疫病におかされた幼苗期のネギ
Illustration:rie

【症状】
葉身の葉先~中央に、水が浸みたような斑点が出て黄白色になり、湿度が高いと白い菌糸が薄く生じます。
病気が進行すると、病斑部分から先は枯れて垂れ下がります。
【予防と対策】
疫病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)
※上記リンク先の記事で紹介されている「ダコニール1000」と「ランマンフロアブル」はネギには使用できますが、ネギの疫病の適用はありません。また、ネギには「ホライズンドライフロアブル」と「ライメイフロアブル」は使用できません。


ネギの発芽不良や地際部の腐れ

ネギの苗の発芽不良や、地際部が腐っている場合は病気の可能性があります。

苗立枯病

苗立枯病におかされたネギの発芽・幼苗期 
Illustration:rie

【症状】
播種後土壌中で病原菌に侵されると発芽不良となり、地上部に芽を出さずに枯れ、幼苗で感染した場合地際部が腐り、くびれて倒伏し枯死します。
多湿の場合被害部には白色~褐色のカビが生えることがあります。
【予防と対策】
苗立枯病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)
※上記リンク先の記事で紹介されている「リゾレックス粉剤」と「リゾレックス水和剤」、「GFベンレート水和剤」はネギには使用できますが、ネギの苗立枯病の適用はありません。また、ネギには「タチガレン液剤」と「」は使用できません。


病気以外のネギの生理障害・害虫などの要因も併せて対策

ネギの生育が悪い原因は病気だけとは限りません。曇天が続いたことから起る日照不足、雨や台風などの荒天、肥料や水の過不足などが原因で発生する生理障害でも元気を無くしてしまいます。
また、アザミウマやハモグリバエといった害虫の被害を受けても、生育が悪くなります。
上記の病気を一例として、生理障害や害虫被害など、そのほかの要因も併せて考えながら対策を行いましょう。
※生理障害とは、育てる植物に適さない温度、光、土壌の状態や栄養による障害などによって生長が阻害されること。
生理障害のまとめ

▼ネギに発生する害虫のことならこちらをご覧ください。

ネギで発生しやすい養分の欠乏・過剰症状

生理障害の中でも、ネギの栽培で起こりやすい養分の欠乏症状について紹介します。

窒素欠乏

葉先から枯れて、全体的に色が薄くなり、生育が悪くなります。

施肥をする際には、事前に土壌中の窒素分がどれほど残っているかを調べましょう。農業者の方はJAや普及所などの機関で土壌分析を依頼できる場合もあります。
▼窒素分分析はこちらもご覧ください。


ネギの症状から病気を推測し、早めの対策を

ネギは葉身や葉鞘、根などにさまざまな病気が発生します。ネギはほとんどの部位が可食部で商品となるため、病気が発生してしまうと商品価値がなくなってしまいます。
多湿で病気が発生しやすいため、雨が続く時期は注意が必要です。特徴的な症状から病気を早期に発見し、手遅れになる前に早めの対策を行いましょう。

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この記事の筆者:
rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。

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