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梅雨対策がトマト栽培を制する【小規模農家が実践する収量アップの秘訣】


日照時間が短く湿度も高い「梅雨」はトマトにとって大の苦手。そんな梅雨時にトマトを栽培する際に気を付けておくべきポイントについて、現役のトマト農家が解説します。
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トマトは乾燥を好む植物

赤いトマト
出典:Pixabay
本格的な梅雨。ジメジメする日が続いて、この時季が苦手な方も多いのではないでしょうか。
梅雨は夏秋トマトにとっても苦手なもので、トマト農家も栽培管理にとても気を遣います。

その理由は、本来トマトという植物が育ってきた環境にあります。
トマトは、中南米アンデス山脈の乾燥した高原地帯が原産の植物といわれています。
そのような環境で生まれた植物なので、トマトはカラッと乾燥した気候が大好き。一方、雨に当たるのを嫌います。梅雨とは真逆の環境ですね。

トマトの支柱の立て方・摘芯・わき芽かきについてはこちら


トマト栽培は梅雨時期の草勢維持と病虫害対策がコツ

ミニトマトと露
出典:写真AC

日照時間が不足する|樹勢の低下

梅雨に入り曇りや雨の日が続くと、日照不足になり、太陽が大好きなトマトの生育にも影響があります。
植物は光合成によって生命活動に必要なエネルギーを作り出しているのはご存知ですよね。
光合成には「光」「水」「二酸化炭素」の3つの要素が必要ですが、梅雨はこのうち「光」が不足してしまいます。
どんなに水や肥料を与えても、梅雨で光合成量が低下していたら、作り出せる養分(ブドウ糖)が少なくなるので、トマトが充分に生長できなくなります。

特に6~7月にかけては、夏秋トマトの収穫が始まったばかりの時期で、着果負担(着果による樹への負担)がとても大きくなっているので草勢が低下しやすいです。
その状況で開花しようとする花は弱々しくなり質が落ちて、実がつかないという結果につながってしまいがち。

トマト・ミニトマトへの上手な肥料の与え方はこちら


湿度が高い|病気になりやすい

湿度の高さも生育に悪影響を与えます。
植物の表皮には「気孔」と呼ばれる穴があいていて、二酸化炭素や酸素を吸収・排出したりするほかにも、水分を体外に吐き出し、代わりに根からの水や養分の吸収を促す働きがあります。
これを「蒸散」というのですが、湿度が高いと気孔による蒸散がうまくいかず、植物が根から水や養分を吸収できないことにつながるのです。

また、トマトを含め植物の病気は「カビ」が原因となることが多く、多湿によってカビが繁殖しやすい環境が続くと、病気のリスクが高まります。

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水分が多くなりがち|土の通気性が悪化

光合成には「水」が必要ですが、水が多過ぎるのも良くありません。
雨が多く土の中が常に湿った状態になると、土の通気性が悪くなります。
一般的に良い土の条件とは、軟らかくて適度に通気性や保水性などがあり植物が根を張りやすい状態とされています。通気性の悪くなった土は根が呼吸することが困難になり、最悪の場合、根が腐ってしまうこともあります。トマトのハウス栽培が多い理由のひとつには、水の調整がしやすいというメリットがあるからなんです。

梅雨を乗り越えるための栽培のポイントとは

収穫直前のトマト
撮影:梶原甲亮
このように、梅雨はトマトの生育に適さない要素がいくつもあります。
この状態でトマトの栽培を続けると、生育自体が悪くなるだけでなく病気や害虫の被害に遭うリスクも高まるので、何らかの対策が必要となります。

「摘果」で着果負担を軽減

トマトの樹の着果負担を少しでも減らすために、トマトの実を「摘果」します。

大玉トマトの場合、1つの果房あたり3~4個程度に制限してあげると、着果負担が減り、草勢回復につながります。特に1~2段目は、梅雨の時期に肥大が進み樹に負担をかけてしまうので、最大3個までに制限した方が良いでしょう。

トマトの摘果について詳しくはこちら


光を当てる

トマトが少しでも多く光を受けることができるようにしてあげることも重要です。

トマトの株が何本もある場合は株間をできるだけあけたり、生長点をなるべく垂直に立てたりすることで、少ない光を最大限受けられるように工夫します。

葉面散布剤を使う

梅雨により根の機能が低下している時は、根から充分に養分を吸収しにくくなっています。
そこで、主に生長点に対し葉面散布することで、葉の表面から肥料成分を吸収させ、曇天で弱ってしまった後の回復力を向上させることが期待できます。

病虫害のリスクを減らすために下葉を除去する

1段目を収穫するころには、それより下方の葉は役割を終えていきますが、葉が残ったままだと空気の通りが悪いので病気の蔓延につながります。
収穫した段数より下方の葉を除去しておくと病虫害の抑制に効果的です。

特に梅雨は、うどんこ病や灰色カビ病といった病気が多発しやすい時期でもあり、そのリスクを減らすこともできます。ただし、葉を除去すると当然ながらトマトの樹に傷がつくことになるため、そこから病原菌が侵入する場合もあります。

下葉の除去は傷口が乾きやすい晴天日に行うようにしてください。

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梅雨を制する者がトマト栽培を制する!?

梅雨明けの空
出典:写真AC
梅雨の時期は、プロ農家でも生育のコントロールが難しいです。
そのため、常日頃からトマトの生育状況を観察しながら、「曇天」「多湿」という環境から少しでもストレスを減らしてあげたり、病害虫の発生を予防してリスクを低減してあげたりといった対策が効果的です。

梅雨は、トマトの樹の元気がなくなり花が落ちてしまったりと樹勢の維持が難しいもの。この時期を何とか乗り越えることができればトマト本来の力が回復すると信じて、一緒に頑張っていきましょう!

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この記事の筆者:
梶原 甲亮

熊本県山都町在住。代々続く農家の7代目。九州大学法学部を卒業して熊本県庁に就職。子どもが生まれ、食への関心が高まると共に「安心安全な食べ物を届けたい」「農業を夢のある仕事にしたい」という想いでUターン。現在、3兄弟の父親として日々学びながら農業に取り組んでいます!

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