症状からわかるオクラの害虫


オクラの葉や果実を食害し、被害をもたらす害虫。加害部位とそこに現れる被害症状から、害虫そのものは見えなくても原因を判別できるよう、現れる部位ごとのオクラの被害・症状を説明します。
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オクラ

出典:Flickr (Photo by Joi Ito)
高温を好む性質を持つオクラは、夏に旺盛に生育して収穫最盛期を迎えます。野菜にしては大きく美しい花が早朝に咲いて、午後にはしぼんでしまいます。実は開花後3~4日ほどで収穫できるまでに生長します。
オクラは生育初期の苗や、果実に被害をおよぼす害虫の予防と対策が不可欠ですが、ここでは注意すべき害虫をその被害部位の特徴と合わせて説明します。

本記事は教育機関で講師を勤められ、数多くの病害虫についての書籍を執筆されている草間先生に監修いただきました。

監修者 草間祐輔(くさまゆうすけ)先生のプロフィール

草間祐輔先生
画像提供:草間祐輔先生

主な経歴:
・長野県松本市生まれ
・千葉大学園芸学部卒業
・米国ロサンゼルス郊外のナーセリー&ガーデンセンター(観賞植物生産・小売業)に勤務後、家庭園芸農薬肥料メーカーに在職。
〜植物の病害虫防除や肥料ついて研鑽(けんさん)を積み、講習会などで広く実践的な指導を行っている。
・千葉大学園芸学部非常勤講師。千葉県立農業大学校非常勤講師。東京農業大学グリーンアカデミー非常勤講師。テクノ・ホルティ園芸専門学校非常勤講師。日本ガーデンデザイン専門学校非常勤講師。
〜業界では農薬の安全・適正使用の普及や指導を行う(公社)緑の安全推進協会認定・緑の安全管理士、及び同協会講師としても活動する。
〜趣味は植物の病気、害虫の写真撮影。身近に出くわす被害症状にこだわり、20年来、撮影している。

主な著書:
「だれでもわかる 病害虫防除対策」(万来舎)
「野菜・果樹の病害虫防除」(誠文堂新光社)
「症状と原因が写真でわかる 野菜の病害虫ハンドブック」(家の光協会)
「症状と原因が写真でわかる 庭木・花木・果樹の病害虫ハンドブック」(家の光協会)
「写真で見つける病害虫対策ブック」(NHK出版)
「人にもやさしい病害虫防除」(講談社)
「植物の病気と害虫 防ぎ方・なおし方」(主婦の友社)など多数。
現在、NHK「趣味の園芸」テキストで「今月気をつけたい病気と害虫」を連載中。初心者にも分かりやすい写真と解説に定評がある。

農業でのオクラ栽培の方法はこちら


畑や庭などでオクラを栽培したい人はこちら


プランターでオクラを栽培する方法は、こちらの記事で!


オクラの病気に関してはこちら


葉・茎に被害を及ぼす害虫

オクラは葉が大きく加害されると、株全体の生長や収穫量に影響を及ぼすことがあるので注意が必要です。ここでは葉や茎を加害する害虫をその被害の様子と合わせて紹介します。

アブラムシ類

アブラムシの食害を受けたオクラの葉
出典:Flickr (photo by Scot Nelson)

【害虫名】
ワタアブラムシなど
【食害の様子】
葉裏、生長点付近、蕾などに寄生して吸汁害をもたらします。繁殖力が高く、葉裏などに群生して寄生すると全体が黒く見えるほどになります。
被害が進むと葉が萎縮したり、生長点付近では奇形葉が生じたりして生育が妨げられます。
また、アブラムシ類はすす病を発生させたり、モザイク病のウイルスを媒介したりするので、病気の発症についても注意が必要です。
【予防と対策】
アブラムシ類を防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「モスピラン粒剤」はオクラには使用できません


すす病やモザイク病の関連記事はこちら


ハモグリバエ類

【害虫名】
トマトハモグリバエ、マメハモグリバエ、ナスハモグリバエなど
【食害の様子】
葉肉内に産卵された卵からふ化した幼虫が、葉の内側を食べながら進みます。加害を受けた葉では、表面に不規則な線状の食害痕がまばらに残り、時間が経過すると変色することもあります。
【予防と対策】
ハモグリバエ類を防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「プレバソンフロアブル5」「アルバリン粒剤」「アファーム乳剤」は、オクラにおいてハモグリバエ類の適用はありません
施設栽培においては天敵寄生蜂の「ハモグリミドリヒメコバチ剤(製剤名:ミドリヒメ)」や耕種的方法などの防除が効果的です。


メイガ類

ワタノメイガの被害を受けたオクラの葉

【害虫名】
ワタノメイガ、フキノメイガなど
【食害の様子】
ワタノメイガは、幼虫が葉を巻いて内側に潜み内部から食害します。多発すると株のほとんどの葉を巻いて食い尽くしていきます。
フキノメイガでは若齢幼虫が葉を食害した後、茎や葉柄に食入して内部を加害するので、葉が枯れたり、茎が折れたりする被害が発生します。食入部位に糞(ふん)が溜まっていることが多く、葉裏には魚のうろこ状に卵塊が産み付けられるので、フキノメイガの被害だとわかります。
【予防と対策】
成虫の侵入や産卵を防ぐために防虫ネットなどを用いることが有効です。ワタノメイガに葉を巻かれてからでは薬剤がかかりづらく、防除が難しいので、発見次第葉の中に潜む幼虫を捕殺します。フキノメイガでは被害が生じた部分を茎ごと切り取って処分しましょう。


防虫ネットの関連記事はこちら


ヨトウムシ類

ハスモンヨトウに加害されたオクラの葉

【害虫名】
ハスモンヨトウなど
【食害の様子】
葉裏に卵塊が産み付けられます。卵からふ化した幼虫は、集団で葉の表皮を残して食害するので、被害初期では葉が白く変色したように見えます。老齢幼虫になるにつれて、葉脈を残して著しく葉を食い荒らします。
【予防と対策】
ヨトウムシ類を防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「デルフィン顆粒水和剤」はオクラにおいてシロイチモジヨトウ、ハスモンヨトウの適用があります。また「ディアナSC」「スピノエース顆粒水和剤」はオクラには使用できません
老齢幼虫になると薬剤が効きにくくなるので、早期に発見して早めの防除対策が重要です。


ネキリムシ類

ネキリムシに加害されたオクラの幼苗

【害虫名】
カブラヤガ、タマナヤガなど
【食害の様子】
卵からふ化した若齢幼虫が葉を食害します。中齢以降になると昼間は土の中に潜み、夜間に地上に出てきて地際部を加害します。特に幼苗が被害を受けると株が枯死してしまうので注意が必要です。
【予防と対策】
ネキリムシ類を防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「サンケイデナポン5%ベイト」はオクラには使用できません


フタトガリコヤガ

フタトガリコヤガに加害されたオクラ

【害虫名】
フタトガリコヤガ
【食害の様子】
オクラなどアオイ科の植物を好む食欲旺盛な幼虫が、太い葉脈を残して葉を食い荒らします。
【予防と対策】
幼虫の体長は35~40mmで、毛が生えた緑の体色に黄色の線と黒い斑点、シャクトリムシのような動きをします。多発するとオクラの実にも被害が及ぶことがあるので、幼虫の発生には留意しましょう。


葉・茎を食害するほかの注意すべき害虫

上記の害虫以外にも発生することがある害虫について紹介します。

ヨコバイ類

【害虫名】
フタテンミドリヒメヨコバイ
【食害の様子】
幼虫と成虫がともに新葉や茎を吸汁します。被害を受けた葉は上向きにカールして萎凋(いちょう)したり、葉が黄化したりします。さらに被害が進むと赤褐色となって枯死するなど、株全体の生育が鈍るため収量が減少してしまいます。
【予防と対策】
侵入・発生の可能性がある地域では、防虫ネットなどを設置して圃場内に入らせないようにしましょう。


果実に被害を及ぼす害虫

果実を好んで食害する害虫に注意して、予防と対策を心がけましょう。

タバコガ類

オオタバコガに加害されたオクラ

【害虫名】
オオタバコガ
【食害の様子】
開花後の花の内部に侵入して幼果を食害します。大きくなったオクラの実には表面から穴をあけて食入し、果実内部を食い荒らします。次々に移動しながら加害していくため早期発見・防除が重要です。
【予防と対策】
タバコガ類を防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「フェニックス顆粒水和剤」はタバコガ類の適用はありません「プレオフロアブル」「エスマルクDF」「ゼンターリ顆粒水和剤」「コンフューザーV」はオクラにおいてオオタバコガの適用があります。また「ディアナSC」はオクラには使用できません


カメムシ類

カメムシの加害を受けるオクラ
出典:Flickr (Photo by Hunter Desportes)

【害虫名】
ミナミアオカメムシ、ブチヒゲカメムシ、アカホシカメムシなど
【食害の様子】
幼虫、成虫がともに、オクラの実や蕾を吸汁加害します。外見上被害が無いように見えても、オクラの実を切断して断面を見てみると内部がスポンジ状になっていたり、子実や吸汁部が褐色に変色したりしていることが確認できます。
【予防と対策】
カメムシ類を防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「アルバリン顆粒水溶剤」はオクラにおいてカメムシ類の適用はありません。また「スミチオン乳剤」はオクラには使用できません


根に被害を及ぼす害虫

根が害虫の被害を受けると株全体も大きく影響を受けてしまうので、種まきや植え付け前の土壌消毒などが重要となります。

センチュウ類

ネコブセンチュウの被害を受けたオクラ

【害虫名】
サツマイモネコブセンチュウなど
【食害の様子】
寄生された根は、組織が肥大してコブのようになります。寄生が少ない場合には、生長にほとんど影響を与えませんが、多発すると根部がコブだらけになって生長が妨げられます。特に幼苗期に寄生を受けると生育が著しく阻害されます。
【予防と対策】
センチュウ類を防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「ネマトリンエース粒剤」はオクラにおいてネコブセンチュウの適用があります
栽培・生育期間中に防除することが困難なので、連作を避けたり、土壌消毒を行ったりする予防対策が有効です。


土壌消毒や連作障害の関連記事はこちら


ネコブセンチュウに要注意!

オクラ
出典:Flickr (Photo by Bob Richmond)
オクラが収穫できるのは主に暑い夏なので、多くの害虫の活動が活発な時期にあたります。アブラムシ類やヨトウムシ類では茎葉が大きな被害を受け、タバコガ類やカメムシ類は収穫部位であるオクラの実を直接加害します。また、根に寄生するセンチュウ類による被害は大きく、種まきや植え付け前からの防除が不可欠です。

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この記事の筆者:
村田 康允

大阪府茨木市出身。大学院農学研究科で農業害虫を扱った研究に取り組み、博士号を取得。国際学会・ワークショップや応用研究プロジェクトなどに積極的に参加。 幼少期から持つ生物への興味とこれまでの経験を活かして、栽培・農薬・害虫などの記事編集を担当。 好きなことは音楽で遊ぶこと。

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