モザイク病の症状
「葉が濃淡のモザイク状になる」などの症状が現れた場合は、モザイク病を疑いましょう。モザイク病の症状
具体的にどのような症状になるのか説明します。葉での主な症状
はじめ葉の緑色がまだらに色抜けしてモザイク状になり、やがて矮化(わいか)します。※矮化とは植物が正常に伸びていかず抑制された状態となり、草丈が正常時に比べて低くなって小型化すること。
新芽での主な症状
新芽はねじれるように生育します。花弁での主な症状
花弁では色抜けすることもあります。株全体での主な症状
株の生長が抑制されるなどの症状が現れます。▼植物の病気の症状についてはこちらの記事もご覧ください
モザイク病の発症原因
モザイク病はウイルスが原因の病気で、主にアブラムシによって媒介されます。そのためモザイク病の発生時期は、アブラムシが多発する時期でもあります。名前 | モザイク病 |
分類 | ウイルス |
発生時期 | 4~10月 |
発病適温 | 25~30℃ |
モザイク病の原因は「ウイルス」
モザイク病の感染原因となるウイルスの伝搬は「虫」によるものと、「人間の管理作業(汁液伝染)」によるものがあります。1. 虫による伝搬
植物がモザイク病に感染すると植物内で増殖し、その植物を虫が吸汁することで、ウイルスも一緒に虫の体内へ移動します。そして、体内にウィルスをもつ保毒虫が次の植物を吸汁することで、ウイルスは虫の口針を通って伝染します。このようにモザイク病は、虫の伝搬によって感染が広がっていきます。モザイク病を媒介するのは主にアブラムシです。アブラムシの発生が多いと、病気が発病する株も多くなります。
モザイク病には病気自体を治療する方法は無いため、アブラムシなどの害虫対策を行い予防することが重要です。
2. 人間による伝搬
モザイク病のウイルスは、日々の管理作業によっても伝搬します。摘葉(葉かき、芽かき)、収穫などの管理作業で、人の手やはさみ、ナイフについた汁液によって植物から植物へとウイルスが感染します。モザイク病とほかの病害の見分け方
葉が色抜けする、芽先が縮れる、萎れるなどの症状が現れた場合、微量要素障害や根腐萎凋病などの病気も疑われます。▼要素障害についてはこちらをご覧ください。
▼根腐萎凋病についてはこちらをご覧ください。
見分け方の一例
1畝、1ラインがまるごと萎れていることがあります。これは人の手によって行われる「管理作業」によってウイルスが伝染したモザイク病であることが濃厚です。モザイク病に感染する主な植物
モザイク病は野菜類、花き類などどんな植物でも感染する病気です。ここではモザイク病が問題となっている主要な作物とその症状を紹介します。野菜類
野菜類ではキュウリ、トマト、ジャガイモ、ピーマン、ナスなどに発生します。キュウリ
葉が緑の濃淡のモザイク症状になり、被害が進むと葉の縮れなどもみられます。茶褐色の斑点が出ることもあり、果実にもモザイク症状や奇形が生じます。▼キュウリの育て方ならこちらをご覧ください。
トマト
葉や茎に緑の濃淡のモザイク症状が現れ、果実ではまだらに色抜けする「えそ症状」となる場合もあります。また、トマトに発症するモザイク病のウイルスは数種類あります。例えば、虫や人間以外に種子によって伝染し、被害残渣(ざんさ)とともに土中に残って土壌伝染する「トマトモザイクウイルス(Tomato mosaic virus;ToMV)」など複合して感染することもあります。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。
▼トマトの育て方ならこちらをご覧ください。
ジャガイモ
主に葉がモザイク症状になり、黒いえそ斑点が出ることもあります。ジャガイモに発症するモザイク病のウイルスも数種類あり、病原体によって症状が異なります。病気に感染した種イモは、モザイク病の伝染源となるため植え付けないように注意します。
▼ジャガイモの育て方ならこちらをご覧ください。
草花
草花ではチューリップ、バラ、シンビジウム、パンジー、ジニアなどに発生します。モザイク病に感染した株の球根を植える、接ぎ木、挿し木をすると必ず発病するため控えましょう。
果樹・樹木
果樹、樹木ではミカン、りんご、アジサイ、クワ(桑)などに発生します。モザイク病に感染した株の挿し木、苗木、穂木の使用、株分けなどは必ず発病するため控えましょう。
▼アジサイの育て方ならこちらをご覧ください。
モザイク病予防に有効な対策
モザイク病の予防対策や、圃場内でモザイク病のまん延を防ぐための方法も紹介します。圃場で行う「農薬を使わない」対策
農薬を使わない圃場で行う対策です。1. 圃場や菜園周りの除草
アブラムシは圃場や菜園の外の雑草から飛来します。圃場や菜園周辺の除草を徹底して、伝染源を根絶しましょう。2. シルバーマルチや防虫ネットの利用
苗床では防虫ネットを使用し、アブラムシの侵入を防ぎましょう。アブラムシは下から光が当たると、上下の感覚が分からなくなり性質があります。▼マルチについてはこちらもご覧ください。
▼防虫ネットについてはこちらもご覧ください。
▼アブラムシ対策についてはこちらもご覧ください。
3. モザイク病に強い品種の利用
モザイク病に強い品種を利用することが最も効果的です。トマトでは、ほとんどの品種で抵抗性が導入されています。【品種の例】
キュウリ:Vアーチ、Vロード(タキイ種苗)など
4. 剪定ばさみ、ナイフ、手指の消毒
ウイルス病は汁液で感染します。作物の管理(剪定、収穫など)に使うはさみやナイフ、手指は定期的に消毒してください。「1ライン進んだら消毒」など作業の決まりごとを作っておくと被害を最小限に抑えられます。病気の発生が見られた場合は、1株毎に消毒してください。
「トマトモザイクウィルス」には土壌消毒
アブラムシによって媒介されるモザイク病は、土壌中に菌が残ることは無いので通常土壌消毒の必要はありません。しかし「Tomato mosaic virus;ToMV(トマトモザイクウィルス)」というモザイク病の病原菌は、種子によって伝染し、被害残渣とともに土中に残って土壌伝染します。このトマトモザイク病が疑われた際、太陽熱消毒ではほとんど効果はみられないことから、薬剤を使った土壌消毒を行うか、土を入れ替える対応を行います。
※現在では抵抗性品種が多く販売されていますので、抵抗性品種の導入が効果的です。
▼土壌消毒のことならこちらをご覧ください。
アブラムシに効果的な「農薬」
農薬(殺虫剤)を使用してアブラムシを防除しましょう。作物ごとに使用する農薬にアブラムシの登録があるか必ず確認してください。また、散布は1回だけではなく、定期的に農薬の種類を組み合わせたローテーション散布がおすすめです。※農薬は地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。
▼殺虫剤のことならこちらをご覧ください。
▼ローテーション散布のことならこちらをご覧ください。
モスピラン・トップジンMスプレー
モスピラン・トップジンMスプレー
農薬が効きにくくなっているアブラムシにも高い効果があります。1カ月持続効果があり、うどんこ病、炭疽病など病害も同時防除可能です。
・内容量:420ml
・有効成分:アセタミプリド・チオファネートメチル
・IRACコード:4A
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・有効成分:アセタミプリド・チオファネートメチル
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ウララDF
ウララ DF
アブラムシに高い効果があり、作物によっては4000倍でも使用可能なので経済的です。
・内容量:250g
・有効成分:フロニカミド(10.0%)
・IRACコード:29
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・有効成分:フロニカミド(10.0%)
・IRACコード:29
粘着くん液剤
粘着くん液剤
有効成分に食品であるでんぷんを使用しています。粘着成分がアブラムシの呼吸の穴(気門)を封鎖して、窒息させます。
・内容量: 1L
・有効成分:ヒドロキシプロピルデンプン(5.0%)
・IRACコード:UNE
・内容量: 1L
・有効成分:ヒドロキシプロピルデンプン(5.0%)
・IRACコード:UNE
▼農薬を安全に使用するためにまずはこちらをご覧ください。
▼希釈方法や散布後の処理方法などそのほかの農薬のことなら農薬まとめをご覧ください。
モザイク病の人体への影響は?
モザイク病は植物の病気なので、触ったり食べたりして人に感染することはありません。一方、モザイク病に激しく侵された農作物は、植物自体が病気に対抗して毒素を生成している可能性があるので(ファイトアレキシン、アレルギー原因タンパク質など)、人体に影響が無いとはいえず、食べるのはあまりおすすめしません。モザイク病対策に何より大事なのはアブラムシ対策
モザイク病は主にアブラムシによって媒介されるウイルス病です。一度発病してしまったら治療方法が無いことから、病気を未然に防ぐためには、アブラムシ対策が欠かせません。圃場回りの除草、予防的な農薬散布などの対策を行いましょう。また、モザイク病は管理作業によっても伝染するので、日頃から使用するはさみやナイフなどの消毒を心がけてください。紹介されたアイテム
シルバーマルチ
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