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東京農業アカデミー第3期生インタビュー|「子どもたちに野菜を育てる楽しさと食の大切さを伝えたい」高見健太郎さん


東京農業の担い手を育てるために、東京都が設立した「東京農業アカデミー」。笑顔があふれる第3期生の皆さんにお話を伺いました。今回は会社員から農家への転身を目指す高見健太郎さん。東京農業アカデミーに入学したきっかけや、目指す就農像などを語っていただきました。
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高見健太郎さん

撮影:上溝 恭香
東京の農業の担い手を育成するため、2020年に誕生した東京農業アカデミー。第3期生として学ぶ高見健太郎さんに、就農を目指す理由、研修の印象、将来のビジョンなどを伺いました。

漠然と抱いていた「農業をやりたい」という思い

高見健太郎さん
撮影:上溝 恭香

子どものころから土に親しむ

高見健太郎さんは、大学の経済学部を卒業後、約13年間調剤薬局に勤務し、調剤補助や事務職、人事などを担当してきました。農業とはかけ離れた経歴から就農を希望するようになったきっかけは、2020年に家庭菜園を始めたことでした。

高見さんには、神奈川で兼業農家を営む親戚がいます。また、小さいころから趣味で園芸をするなど土いじりがとても好きでした。そのため、漠然と「いつか農業をやってみたい」という思いは抱き続けていました。その気持ちが自分の中で大きくなってきたのは、家庭菜園での失敗だったといいます。
高見健太郎さん
高見健太郎さん
1年ほど家庭菜園でタマネギやニンニク、ハクサイなどをメインに育てていました。自分で作った野菜の収穫は楽しいし、採れたてのハクサイは特においしかったです。けれども、ニンニクが病気や虫に結構やられてしまって悔しさや栽培の難しさを感じました。
もっと本格的に学びたいと思ったときに、たまたま東京農業アカデミーを見つけたんです。

就農には家族も理解と協力を

高見さんには、2021年に生まれた子どもがいます。就農を目指したいと家族や周りに話したとき、妻からも親戚からも心配されました。
高見健太郎さん
高見健太郎さん
東京農業アカデミーにいる間は給料も出ませんし、就農後も安定しない可能性もあるということでいろいろな人から「大丈夫なの?」と言われました。
でも、話し合った結果、妻も親戚も納得してくれました。家族の協力なしには入学できませんでした。

農業に関することを多方面から学べる

高見健太郎さん
撮影:上溝 恭香

入学の決め手はカリキュラム

就農を決意してから、地方への移住を考えたり、ほかの研修機関とも比較検討したりしました。最終的に東京農業アカデミーに決めたのは、カリキュラムが充実し、経験豊富な指導員がいること、そして東京都によるサポート体制が整っているからでした。
高見健太郎さん
高見健太郎さん
研修が2年間あるので、その中でたくさんのチャレンジと失敗ができるのも魅力に感じました。
アカデミーでの失敗は就農後に生かしていけるのではないかと思っています。

研修初日にはくわを持っての作業

入校時のガイダンスのあと、ほ場に出てネギを植えました。くわで溝を掘り、1本ずつ手で植える作業でした。後日、あらためて耕運機と定植機を使ってネギを植えたのですが、手植えでは時間も労力も10倍くらいかかっていたことがわかりました。
高見健太郎さん
高見健太郎さん
手植えでは、農作業の大変さを実感できました。翌日は筋肉痛で起き上がるのも大変でしたが…。
機械を使うことによる効率化も、手植えをやったことでより明確にわかりました。ただ、耕運機を使いこなすのは難しく、1年後には指導員や先輩のように難なく使いこなせるようになるのだろうかと不安があります。

採れたての野菜のおいしさを実感。施設設営についても学べる

収穫したトウモロコシとエダマメをすぐにゆでて食べるという体験をして、今までに味わったことのないおいしさに驚きました。また、実習では作物を育てて収穫するだけではなく、施設作りまで体験します。
高見健太郎さん
高見健太郎さん
パイプハウスを今の2年生が作って使っています。業者に頼むとコストは2~3倍かかると聞いていますので、将来施設を作るときの選択肢として自作も視野に入れることができます。

座学でもさまざまな知識を得られる

東京農業アカデミーのほ場は森に囲まれているため、カラス、タヌキ、アライグマ、ハクビシンなどがやってきます。外部講師による獣害対策の講座が開催された直後に、農薬を使っていない第三農場のトウモロコシがハクビシンに食い荒らされるということがありました。
高見健太郎さん
高見健太郎さん
獣害対策の大切さを実感しました。ネットで囲んである場所のトウモロコシは無事でしたので。

年齢や経歴を超えたところで付き合える仲間たち

高見健太郎さん
撮影:上溝 恭香

困ったときには助け合う同期

同期は20代から40代までいて、今までの経験も全く異なります。話をしていても、一緒に作業をしていてもいい刺激になります。
高見健太郎さん
高見健太郎さん
私には1歳にならない子どもがいますので、子どもの急病で休みや早退をせざるを得ないことがあります。そういうときにはみんなに助けてもらっていて、本当に感謝しています。

消費者目線で作業する先輩たち

先輩たちの栽培技術や農機具についての知識はもちろんのこと、収穫後に鮮度を保つためにすぐに保冷したり、ていねいに荷造りしたりしているのを見て勉強になると高見さん。
高見健太郎さん
高見健太郎さん
自分が消費者だったらこういう生産者から買いたい、と思わせてくれる先輩たちです。

子どもたちに安心・安全な野菜を届けたい|第二の故郷での就農を目指して

高見健太郎さん
撮影:上溝 恭香
東京で就農しようと決めたのは、消費者との距離が近くていろいろなアプローチが考えられると思ったからでした。また、できれば第二の故郷である東村山市で農地を探したいと希望しています。神奈川生まれの高見さんは、父親の転勤で全国を転々としてきました。高校を卒業してから現在の居住地である東村山市に引っ越し、そのまま20年暮らしている愛着のある地なのです。
高見健太郎さん
高見健太郎さん
自分の子どもの離乳食を作るようになり、食や食育といったことに関心が高まりました。安心安全な野菜を提供したいというのが最初の目標です。
そして、ゆくゆくは地域の子どもたちに野菜を育てる楽しさや、食べることの大切さも伝えていけたらと思っています。


自分の手で野菜を育てる大変さと大切さを学んでいる高見さん。ただ野菜を作って売るだけでなく、まだ幼い自分の子どもに注ぐ愛情と同じように、地域の子どもたちに接し、楽しく農作業をしながら採りたての野菜を共にほおばる姿が目に浮かぶようです。

東京農業アカデミー八王子研修農場
概要:就農希望者を都市農業の担い手として育成することを目的として東京都が開設した研修農場
対象:18歳以上で都内で就農を目指す人(毎年5名程度を受入れ)
研修農場 : 八王子市大谷町(約20,000m2)
研修期間 : 2年間(年間約220日)
問い合わせ:東京農業アカデミー八王子研修農場 042-649-3444、東京都産業労働局農林水産部農業振興課 03-5320-6221(直通)

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この記事の筆者:
小林 由弥

フリーの編集・ライター。 カントリースタイルの暮らしを楽しむ、という主旨のムックで主にガーデニングやDIYの記事を担当していました。 現在は集合住宅住まいで土のない生活を送っているため、花や紅葉を追っての小旅行が楽しみです。

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