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【生産農家向け】ジャガイモの品種15選|食味、栽培、疫病抵抗性などに着目!


プロ農家としてジャガイモを栽培したい!特に少量多品目で栽培して、個人で消費者に販売したい!という新規就農者におすすめの15品種です。プロ農家としてジャガイモを栽培する場合は、食味だけではなく、栽培のしやすさや貯蔵性、販売のしやすさなど多角的に品種をみて選定しましょう。
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ジャガイモの収穫

出典:PIXTA
ジャガイモの品種といえば、男爵やメークイン、キタアカリなどの人気品種をイメージする方が多いのではないでしょうか。しかし、品種改良が行われ、数多くの魅力的な品種が導入されています。
ここではプロの生産者のうち、とりわけ少量多品目でジャガイモを栽培し、消費者に販売する方に向けて、生産者が栽培しやすい品種や貯蔵性が高い品種、消費者に好まれる品種、少し変わったおすすめの品種とその特徴を一覧で紹介します。

ジャガイモには生食用・加工用・でん粉用品種がある

ジャガイモ品種
出典:Pixabay
ジャガイモの品種は大きくわけて、家庭で調理して食べられる「生食用品種」、ポテトチップスやポテトサラダ、コロッケなどを製造する食品加工会社で使用される「加工用品種」「でん粉用品種」があります。それぞれ魅力的な品種がありますが、今回は「生食用品種」にスポットを当てて紹介します。

ジャガイモの栽培方法や病害虫防除についてはこちら。

家庭菜園におすすめのジャガイモの品種はこちら。

春植え用|手堅いジャガイモ品種

ジャガイモ畑
出典:PIXTA
九州から関東にかけては、春作が可能です。長崎などを含む西南暖地では、一般的には秋作産の種イモを2月下旬から3月上旬に植えつけて、6月中旬から下旬に収穫します。ただし、収穫時期が梅雨と重なるため、疫病などによる腐敗に気をつける必要があります。マルチを使用すると、12月下旬に植え付け、4月末から5月中旬に収穫ができる地域もあります。このような作型の春植えに適した品種には、以下のようなものがあります。

デジマ

デジマは、昭和40年代後半から栽培されるようになりました。皮色は薄いベージュで、肉色は淡黄色で目が浅く見た目がよい品種です。肉質は、やや粘質で食味もいいです。収量は春作、秋作ともに高く、でん粉価は暖地の品種の中ではやや高いことも特徴です。ただし、青枯病、疫病に弱く、そうか病にもやや弱いため、土壌が湿った状態だと二次生長や裂開が発生しやすい性質があります。

ニシユタカ

ニシユタカ
出典:写真AC
ニシユタカは、デジマを母として品種改良された品種です。外観や食味はデジマよりやや劣りますが、特に春作においてはとても多収で、草型もコンパクトで管理がしやすいことが特徴です。また、収穫後の貯蔵についても、暖地で育種された品種の中では休眠期間がやや長く、貯蔵中の腐敗も少ないため、取り扱いがしやすいです。一方で、そうか病やウイルス病に弱く、またイモの肌がやや粗いという短所もあります。特に収穫が遅れると、「肌あれ」と呼ばれ外観の評価が下がります。

普賢丸

普賢丸は、疫病、青枯病には弱いものの、そうか病にはデジマよりはやや強く、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性をもつことが特徴です。皮色が黄色、肉色は淡黄、目が浅く外観がよく、食味もよい品種です。収量に関しては、春作ではデジマ並みですが、収穫が遅れると塊茎基部から亀裂が入り、腐敗が発生するため、収穫時期をしっかり見極めましょう。

ジャガイモの収穫と貯蔵方法のポイントはこちら。

ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持ち、消費者にも人気の品種

ジャガイモ畑とトラクター
出典:ぱくたそ
ジャガイモシストセンチュウとは、線虫の一種です。土壌に混入してしまうと、ジャガイモが寄主作物となり、幼虫が孵化し、根に侵入して、根内で成長します。また、この線虫は土壌中で長期間生存します。
ジャガイモ自体に付くわけでないので、食べる分にはまったく問題ありませんが、生産者にとってはシストセンチュウによって収量が大幅に減少します。また、防除のための労力や金銭的なコストも大きくなります。

しかし、抵抗性品種を一作栽培すると、土壌中のジャガイモシストセンチュウの密度が平均で80〜90%減少します。そのため、センチュウ対策としても、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種の栽培は有益です。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種で、かつ消費者になじみがあり、調理がしやすい人気品種には、以下ようなものがあります。

キタアカリ

キタアカリ
出典:写真AC
すでに有名なキタアカリですが、国内で初めてのジャガイモシストセンチュウ抵抗性生食用品種です。しかし、疫病、塊茎腐敗、青枯病の抵抗性については男爵並みの弱さです。キタアカリが人気の理由は、食味がよいためです。また、ビタミンCの含有量が多いことも特徴です。肉質はやや粉質で、男爵より煮崩れしやすいですが、舌触りがよいともいえます。ただし、貯蔵が長くなると、粉質度が低下しやすい傾向があるので、直販などの場合は、顧客の好みに合わせて出荷時期を変えてもよいでしょう。

とうや

とうや(ジャガイモ)
出典:写真AC
とうやも、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ早生品種です。大粒で、一株あたりのイモ数は少ないです。疫病による塊茎腐敗は、男爵より発生しやすいですが、ウイルス病の自然発生率は少ないです。球形で、目が浅く、粉質好みの方には大変好かれ、人気があります。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種の中で、もっとも早期に出荷できます。緑化や裂開、中心空洞が発生しやすいので気をつけましょう。

十勝こがね

十勝こがね(ジャガイモ)
出典:写真AC
十勝こがねは、早生で大粒、貯蔵性に優れた品種です。皮色は白黄、肉色は淡黄です。やや粉質で、食味がよく、家庭で調理もしやすく、冷めてもおいしいので直売所などで人気がある品種だといわれています。休眠期間が男爵より約50日間長いため、貯蔵性がよいというメリットがある反面、栽培においては萌芽や初期生育や開花が遅いというデメリットもあります。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有しますが、そうか病、青枯れ病に弱く、また塊茎の腐敗抵抗性に関してはかなり弱く、ストロン(地下茎から伸びたわき芽)から腐敗しやすい性質を持ちます。

はるか

はるかは、皮が白く、目の周りが赤い特徴的な見た目をもつ中生品種です。舌触りも滑らかで、食味もよく、ポテトサラダやコロッケに適しています。また、多収で、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種というだけではなく、青枯病にもやや強い特徴をもちます。さらに、塊茎の腐敗に対して抵抗性を有し、打撲に対しても強い性質があります。そのため、機械での収穫などにも適しています。休眠期間も比較的長いです。

センチュウの防除についてはこちら。

カラフルなジャガイモ品種|人気ランキングの常連も!

カラフルなジャガイモ
出典:PIXTA
カラフルなジャガイモ品種は、アントシアニンを含んでいます。日本でも、消費者需要の多様化により、南アメリカのアンデス地方の有色品種を利用し、赤や紫の品種が育成されるようになりました。

ノーザンルビー

ノーザンルビーは、皮色、肉色ともに赤です。アントシアニンを1gあたり1.9mgほど含んでいます。男爵より多収で、一個重も大きく、適正なでん粉価(でん粉と糖を含んだ値)であることが多く、加工時の歩留まりもよい品種です。中早生で、草性も直立型なので、栽培管理も容易です。病害虫対策としても、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性、塊茎腐敗抵抗性を有しており、また、二次生長も比較的起こりにくいです。ただし、そうか病やYモザイク病に関しては抵抗性が弱いという特徴があります。

シャドークイーン

シャドークイーン(ジャガイモ)
出典:PIXTA
シャドークイーンは、2006年に品種登録された比較的新しい品種で、皮色、肉色ともに紫です。アントシアニンを1gあたり7.4mgほど含んでいます。色素濃度が高いため、水煮や蒸しによる加熱調理でも紫色が保たれます。男爵より多収で、でん粉価も高い特徴をもちます。ただし、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性、Yモザイク病抵抗性は弱く、疫病抵抗性、そうか病抵抗性もやや弱いので、栽培時の病害虫管理には注意しましょう。

インカのめざめ

インカのめざめも、「カラフルジャガイモ3種セット」などとして販売されることが多い品種です。外観もよく、食味も「ナッツフレーバー」と称され、通販サイトなどでも人気ランキングの上位にランクイン。カロテノイド系色素を含有し、2〜4℃で貯蔵すると甘みが出るため、おいしいというイメージが定着しています。
しかし、栽培に関しては難しく、収量は男爵の7割程度しかありません。一個の重さ平均も、50g程度ととても小さいです。青枯病には強いですが、疫病やウイルス病に弱く、休眠期間も30日と短い特徴があり、収穫が遅れると土壌中で芽が出てしまうことさえあります。

海外育種系おしゃれ品種

シェリー(ジャガイモ)
出典:PIXTA
ジャガイモは、国内の公的機関によって開発された品種が多いのですが、海外で育成され日本に導入された品種も少ないながら存在します。

マチルダ

スウェーデンで育成された品種です。北海道の芽室町を中心として栽培されています。皮色は黄、肉色は黄白で、目は浅く見た目がよい特徴を持ちます。疫病抵抗性、塊茎腐敗抵抗性、Yモザイク病抵抗性があり、化学農薬なしでも比較的栽培がしやすい品種です。ただし、そうか病には羅病し、シストセンチュウには感受性です。また、小粒で完熟させて供給することを狙った品種であるため、窒素の多量施用は避け、できるだけ大きめの全粒種イモを使用することが望ましいとされています。

シェリー

フランスで育成された品種です。皮色は赤、肉色は淡黄です。平均の一個重は極小ですが、着生数が多く、小さいサイズの塊茎が多く収穫できるという特徴があります。特定のジャガイモシストセンチュウには抵抗性を有していますが、青枯れ病やウイルスにも弱く、打撲にも強くないため、栽培する上で気にとめておきましょう。食味に関しては、あまり煮崩れしないながらも、ほくほくとした食感も味わえます。煮込み料理にも適しています。

まだまだある!個性的なジャガイモの品種

ジャガイモ
写真提供:maru communicate 紀平真理子
最後に、あまり知られていないながらも、食味がよく希少価値が高い品種や、消費者への提案方法によっては魅力的な品種を紹介します。

グラウンド ペチカ

デストロイヤー(ジャガイモ)
出典:ぱくたそ
グラウンド ペチカは、長崎県雲仙市で数々の品種を生み出している俵正彦氏が農場で「レッドムーン」の突然変異として発見し、育成した品種です。一般的には、「デストロイヤー」という名前で販売されていることが多いです。皮色が紫で目の周囲が赤いといった特徴的でインパクトがある外観を持ちます。やや粘質で水分が多い品種で、収穫後から粉っぽさがなく、食味がよいです。貯蔵性も高く、貯蔵で熟成させると、また異なる味わいでおいしいです。

タワラマゼラン

タワラマゼラン(ジャガイモ)
写真提供:maru communicate 紀平真理子
タワラマゼランは、上記のグラウンド ペチカが突然変異し、その後育成された品種です。皮色が濃い紫、限りなく黒に近いというインパクトのある見た目も去ることながら、食味がとてもよく滑らかで、味が濃いのに上品な食感です。タワラマゼンランもグラウンド ペチカ同様に、貯蔵にて糖化や熟化させるとまた深い味わいがある、とてもおもしろい品種です。

トヨシロ

大手菓子製造メーカーのポテトチップスなどの原料としても使用されている品種ですが、還元糖含有量が少なく、油加工に適しており、調理後や貯蔵後に黒変が少ないため、家庭でも生食用としても重宝されます。平均の一個重は中早生品種としては大きく、中早生品種としては多収です。粉状そうか病には強い傾向がありますが、乾腐病や黒あざ病には弱く、ジャガイモシストセンチュウ感受性品種であるため注意しましょう。マルチ栽培では、300g以上の大きい塊茎で、中心空洞が発生しやすい傾向にあります。

めずらしい品種は、あらかじめ種イモの入手先などを確認しよう

ジャガイモ品種
出典:PIXTA
プロ生産者向けのさまざまなジャガイモの品種を紹介しました。家庭菜園ではなく、生業としてジャガイモを栽培する場合は、食味に加えて栽培のしやすさや、貯蔵性なども考慮する必要があります。また、生産者や栽培地と品種との相性もあるので、気になった品種があれば、テスト栽培することをおすすめします。

メジャーではない品種の場合には、品種によっては種イモの採種農家が少なく、種イモが欲しい時期に欲しい量だけ手に入らないことも。あらかじめ種イモの入手先など確認しておきましょう。

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この記事の筆者:
紀平 真理子

オランダ大学院にて、開発学(農村部におけるイノベーション・コミュニケーション専攻)修士卒業。農業・食コミュニケーターとして、農業関連事業サポートやイベントコーディネートなどを行うmaru communicate代表。 食の6次産業化プロデュ ーサーレベル3認定。日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。 農業専門誌など、他メディアでも執筆中。

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