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【観光農園を始めたい】ブルーベリー農園とカフェ起業の成功事例に学ぼう!


観光農園やそのメリットについてお伝えします。成功事例として、兵庫県でブルーベリーの摘み取り園とカフェを起業した「futaba cafe」オーナー西田博一さんにお話を伺いました。経営者の熱意と視野の広さ、入念な準備について知ることができます。
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ブルーベリーのパフェ

撮影:AGRI PICK編集部
いちご狩りやぶどう狩りなど、収穫シーズンには多くの人でにぎわう観光農園。ここでは、観光農園を始めるときに知っておきたいことをお伝えします。

ブルーベリー摘み取り園とcafeを起業!西田博一さんに聞く

西田博一氏
撮影:AGRI PICK編集部
まずは実際に観光農園を開園した人の話を聞いてみたい!ということで、兵庫県丹波篠山市でブルーベリー摘み取り園と「futaba cafe」を営むfutaba farm 西田博一さんにお話を伺いました。

futaba cafe 西田博一さん プロフィール
1974年生まれ。関東でIT関連企業に勤務していたが、実家で農業をしていた祖父の死をきっかけに地元で農業をやりながら新しいことを始めてみたいと思い立ちUターン。農業を軸に相性の良い飲食業を組み合わせ、お互いの長所を伸ばし短所を補うスタイルで丹波篠山の豊かな自然に育まれながら事業を展開している。

IT関係の仕事を辞めてUターン

西田さんは東京でIT関係の仕事をしていました。実家は米と黒豆を作る兼業農家。現在は地元に戻り、実家と近隣の農地を使ってブルーベリー、地元名産の丹波栗など、野菜全般を栽培しています。
西田博一さん
西田博一さん
農業に携わるきっかけは祖父の死でした。祖父が亡くなって、実家が農業を続けるのは大変だとわかっていました。それなら若いうちにサラリーマンを辞めて実家に戻って、父と一緒に農地を管理していこうと考えるようになりました。



祖父や父が栽培していなかったブルーベリーに挑戦

実ったブルーベリー
撮影:AGRI PICK編集部
西田さんがブルーベリーに出会ったのは、まだ東京で働いていたころ。
西田博一さん
西田博一さん
たまたま千葉や茨城のブルーベリーの摘み取り園を訪れたときに、食べてみたら甘くておいしくて。日本で育てられることに驚いて印象に残っていました。

調べてみると、実家で栽培している米や黒豆と収穫時期が違うこともわかりました。繁忙期が重ならないこと、通年で栽培できるものがあると収入が安定することなどを考慮して、ブルーベリーの栽培に踏み切ります。

仕事を続けながら、ブルーベリー栽培の準備

ブルーベリー栽培の様子
撮影:AGRI PICK編集部
ブルーベリーが実をつけるようになるまでは、栽培から約3年の月日が必要です。西田さんは仕事を続けながら、ブルーベリー栽培の準備を始めます。関東でブルーベリー園に足を運び栽培方法を聞いたり、剪定作業をさせてもらったことも。ただ、当時ブルーベリーは関西での栽培実績があまりありませんでした。
西田博一さん
西田博一さん
ネックとなったのは土壌でした。関東の土は関東ローム層で、水はけがよくブルーベリー栽培に向いているのですが、地元の丹波篠山の土は粘土質で水はけが悪い。ブルーベリーが枯れる原因になるものでした。

西田さんは、最終的にバッグ栽培を採用することで、その危機を乗り越えます。バッグ栽培とは、鉢の中で栽培に適した溶液を与えながら育てる方法。それでも、丹波篠山地域の寒さや実を採りすぎたことにより、最初に植えた400本のうち100本は枯れてしまったといいます。
西田博一さん
西田博一さん
収穫ができる年の前年に仕事を辞めていたのですが、うまくいかなくても、ブルーベリー栽培をやめようとは思っていませんでした。なんとかこれで食べていこうと考えていました。

補助金を活用して半年後にカフェを開店

futabacafe外観
撮影:AGRI PICK編集部
地元に戻った半年後、「futaba cafe」をオープンした西田さん。開店にあたっては、たまたまハローワークに相談に行って知った受給資格者創業助成金制度(2012年度で終了)を活用することができました。カフェの開店には、農業の厳しさと、二馬力の良さという二つの理由がありました。
西田博一さん
西田博一さん
農家に育っていますから、農業が片手間でできるものではないこと、同時に農業だけで収益を上げることの厳しさが分かっていました。最初から地元に根付いていない品種を営業することは難しいのです。カフェがあれば、売れなかった行き場のない野菜を有効活用でき、飲食も商品になる。カフェの方でも仕入れの負担を減らせるので、お互いに不足している部分を補えると考えました。

農林水産省では、次世代を担う農業者となることを志向する者に対し、就農前の研修を後押しする資金や就農直後の経営確立を支援する資金を交付する事業を行っています。
農業次世代人材投資資金(農林水産省ウェブサイト)


カフェ開店に必要だったもの

カフェの開店には、飲食店経営のノウハウが必要です。心強かったのは、同郷の妻の真紀子さんと妻の妹の大上聖子(みなこ)さん。飲食店の店長経験がある聖子さんは、飲食店の経営について熟知していました。現在、「futaba cafe」では、農業分野を西田さんが、ランチを真紀子さんが、ケーキなどのスイーツを聖子さんが担っています。
西田博一さん
西田博一さん
農業には、家族の協力はなくてはならないものです。

futaba cafe|開園までの歩み

できごと
2008年ブルーベリー専業農家で研修
2009年ブルーベリー400本定植
2010年ブルーベリー300本定植、改装・開店準備
2011年飲食業・菓子製造業営業許可取得、futaba cafe営業開始、ブルーベリー収穫開始
2012年ブルーベリー摘み取り園開園

お客様に満足してもらえる接客を

futabacafeのランチ
撮影:AGRI PICK編集部
「futaba cafe」では、お客様に満足してもらえるようなサービスを心がけています。農業をメインに考えて、店がおろそかになってしまうようなことはないように。店として、きちんとサービスをする意識を持っていることが必要だと考えています。
西田博一さん
西田博一さん
公私混同して、素人っぽい店になってしまわないように気をつけています。

観光農園を始めて気づいたこと

ブルーベリーのケーキ
撮影:AGRI PICK編集部
「futaba cafe」では、最初、顧客ターゲットを広く設定し、また、西田さん自身の経験から、大粒で甘いブルーベリーの品種を導入していました。しかし、実際に摘み取り園を始めてみると、来園者は女性が多いことがわかります。
西田博一さん
西田博一さん
子どもや男性は大きくて甘いブルーベリーで満足するのですが、女性は大きい、甘いだけではダメなんです。甘みと酸味のバランスがいかにとれているかが大事。ケーキと合わせるなら甘いだけではなくて、酸味があって存在感のある品種がいいということが分かってきました。そこでだんだんターゲットを女性に絞って、特色のある品種を増やしていきました。

西田さんは、現在、30種のブルーベリーを育てています。栽培年数を重ねるうちに、西田さん自身も甘さだけではなく、ブルーベリーの持つフレーバーに関心が高まってきているそうです。

広告宣伝費はかけない代わりに…

ブルーベリーをとる手
撮影:AGRI PICK編集部
「futaba cafe」には、多いときで1日に80人ほどのお客様が訪れます。また7月上旬ごろのピーク時は、1日に20人近くがブルーベリー摘みを楽しみます。ただ、広告宣伝費などはほとんどかけていません。
西田博一さん
西田博一さん
ホームページの開設と維持で年間1万円くらいですね。ポスティングなどもしていませんし、その他の広告費はかけていません。その代わりに店にいらしたお客様に商品について、丁寧に説明しています。

こまやかな説明が口コミやリピーターにつながっています。

結果的に農業に専念できた

西田さんの畑
撮影:AGRI PICK編集部
作物を作ることと加工して販売すること。この二つを家族がそれぞれ得意な分野で担当するのが、西田家が見つけた方法でした。栽培した食材をカフェで使うので営業や販売に行く必要がなくなり、結果として、西田さん自身は農業に専念することができるようになったそうです。
西田博一さん
西田博一さん
こちらから販売に行くのではなく、お客様に来てもらうスタイルになりました。営業に行かなくても、店が広告塔になります。

カフェは、農園のアンテナショップ、加工所、直売所、休憩所として活用され、オーナー制度や摘み取り園など、多様な販売方法を取っています。ヤギが出迎えてくれるfutaba cafeは地域の魅力も高めています。

futaba cafe
ブルーベリー園を併設したカフェ。自家農園や地元の季節の食材をふんだんに使ったランチとスイーツを提供しています。
住所:兵庫県丹波篠山市八上内甲85-1
TEL:079-506-1573
FAX:079-506-1574
定休日:毎週水・木曜日
アクセス:JR福知山線「篠山口」駅よりバス乗車「西八上口」より徒歩約2分または「西八上」より徒歩約5分、舞鶴若狭自動車道「丹南篠山口」インターチェンジより車で約20分

観光農園とは

改めて観光農園の定義を確認しましょう。
観光農園とは、農業を営む人がほ場において生産した農産物の収穫などを観光客に体験させたり、ほ場を観賞させて代金を得ている事業のことです。2015年時点において、全国で6,597経営体が観光農園を営んでいます。特に盛んなのが山梨県と長野県で、それぞれ800以上の観光農園があります。

参考:2015年農林業センサス報告書(農林水産省ウェブサイト)

観光農園経営のメリットと必要なことを知ろう

いちご狩りをしている手
出典:写真AC
観光農園を経営したら、とても儲かった!という成功事例も目にします。観光農園ならではのメリットや必要なことを知っておきましょう。

観光農園のメリット

単価が高くなる

観光農園では、体験に対しての料金として、普通に農産物を売るときよりも単価を高く設定していることが多いです。市場や直売所などのように価格競争をする必要がなく、農業体験を通してお客さんが商品の価値をわかって購入してくれたりするので、適正な価格で販売することができます。また、体験料金とともに、収穫する量を農園側が設定できるので、ある程度まとまった量を買ってもらうことができます。

収穫の手間がなくなる

お客さんが自分で収穫するので、収穫作業が軽減できます。その場で持ち帰ってもらえれば、梱包や出荷の作業もする必要がありません。

規格外の農産物も無駄にならない

規格外やわずかな傷のある農産物は出荷できないことがありますが、観光農園ではお客さんが収穫してくれれば商品になります。珍しい形のものが喜ばれたりする可能性もあります。
西田さんのように飲食店を併設している場合や加工品を販売する場合は、原材料として使用することも可能です。

ファンやリピーターを作りやすい

出荷した商品はどこでどんな人が購入しているかまではわかりませんが、観光農園では畑に来てくれた人と交流し、農産物の魅力を直接伝えられます。また消費者にとって、観光農園を訪れたことは思い出となります。楽しい思い出ができれば、再び足を運ぶでしょう。

観光農園に必要なこと

駐車場の看板
出典:写真AC

設備などの準備が必要

観光客を受け入れるにあたり、最低限トイレや看板が必要です。また、駐車場や受付、休憩場所などを用意するとなると、より初期費用がかかることになります。


接客が必要

観光農園ではいろいろなお客さんがやってきて、その一人ひとりに接客が必要です。また、週末や祝日にオープンしておいた方が収益があがるなど、お客さんのニーズにあわせた勤務をする必要があります。

観光農園の始め方|失敗しないために

西田さんのお話からもわかるように、観光農園を始めるにあたっては入念な準備が必要です。年間を通して作物を栽培し、来園してくれる人を安定的に確保するためにはどのような戦略をたてるのか、経営手腕が問われるでしょう。また、家族など協力者の存在も鍵となります。

観光農園には、いろいろな人と直接交流し、多様な形で生計を立てられる魅力があります。収穫の手間が省け、市場には出せない規格外の農産物も収入につなげることができるのもメリット。今後、安定的に農業を続けるための手段として観光農園というかたちを選ぶ人が増えるかもしれません。

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この記事の筆者:
神山 朋香

大学卒業後、地方公務員として消費者教育や労働福祉の普及事業に従事した後、AGRI PICK編集部に。AGRI PICKでは、新規就農に役立つ情報などを執筆しています。

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