ビニールハウスの台風対策はピンポイントで補強
ビニールハウスの台風対策は、業者に見積りを依頼するとかなり高額になることも…。台風シーズンに入ってからでは、あいている業者も少ないので、大きな補強でない限りは自分で進めることをおすすめします。補強といっても、すべての対策をとるのは時間もコストもかかります。それらに制約がある場合は、一番弱い箇所を重点的に補強することで、被害を抑えることができます。台風の強さは風速と風向きで決まる
ビニールハウスにかかる台風の強さを考えるうえでポイントになるのが風速と風向きです。通常のハウスでは風速30m/s以上の強風で被害が大きくなるといわれています。事前に天気予報を確認しておきましょう。また、台風は南風が強い傾向があるので、普段から南風が当たる場所や当たり方を確認して、補強などの対策をとるとよいでしょう。台風の被害にはパターンがある!
ビニールハウスには台風による被害のパターンが主に4つあります。南風の強い日にどのような風向きからハウスがあおりを受けやすいのか確認しておくと、ハウスの弱点と補強のポイントが具体化できます。1. ハウスサイドへの横風による被害
ハウスサイドの肩より上に強い風が当たると、風上側の肩部分から屋根にかけて押しつぶされた状態になります。このような被害の対策のためには、タイバーやX型補強や浮き上がり防止のアンカーなどの設置、アーチ構造の骨材の組み込みなどを行います。
2. ハウスサイド下方への横風による被害
ハウスの肩より下に強い風が当たると、下から吹き上がるようにパイプが変形してしまったり、天井のビニールが飛ばされたりしてしまいます。このような被害の対策としては、風の吹き込みを防止することが大事です。スプリングやパッカーを用いた補強やアンカーによる浮き防止を行います。また、ハウス内の気圧を下げるために、備え付けの換気扇があればそれを付けておくだけでも被害軽減につながります。3. ハウスサイドと平行に吹く風による被害
ハウスサイドと平行に強い風が吹くと、妻側が奥行き方向に倒壊してしまう状態になります。このような被害の対策としては、妻部への防風ネットの展張による補強や筋交いによる補強が効果的です。4. 周辺に高い建物などがあり、ハウスの屋根に向かって上から吹く風による被害
周辺の地形や周りに建築物など高い障害物がある環境では、強風の方向がビニールハウスの屋根の上から押すようにかかるため、ビニールハウスの中央部分が上から押しつぶされたようになってしまうことがあります。このような被害の対策としては、ハウス内部へのアーチパイプの設置が効果的です。ビニールハウスの構造を理解するにはこちら。
ビニールハウスの損害保険
連棟や鉄筋ハウスでは、台風による損害が発生すると専門の業者に修復、立て直しを依頼するしかできないケースもあります。棟数などによっては高額となることもあります。そんなときのために、ビニールハウス用の保険を検討しておくのも一つの手です。最近では農業共済だけでなく、保険会社やビニールハウスメーカーなどが自然災害時のビニールハウスの倒壊に対応した損害保険を取り扱うようになってきています。ビニールハウス共済や火災保険の中に含まれる場合もあります。農業共済よりも一般的な保険会社の方が、保険料が安く、支払い限度額も多いことがあるようなので、何社か比較するようにしましょう。
台風前日にチェックすべきポイント
台風が来る前日には、ビニールハウスのチェックをする必要があります。時間に限りがある中で見落としややり残しがないように進めるため、効率よくチェックポイントを確認するようにしましょう。1. 天気予報で台風の進路予想、風速、風向を確認
南風が最も強く吹く可能性が高い時間帯とその風速から大まかな対策を絞り込みます。もっとも弱いと思われる箇所をしっかり補強しましょう。2. マイカー線を確認
マイカー線使用のハウスは、切れや劣化、緩みがないか確認します。3. 出入り口の扉(戸車)を点検
出入り口の扉(戸車)を点検し、強風で外れないようにしっかりと固定します。4. ハウスの周りを整理
ハウスの周りに飛びやすいものがないかを確認し、整理します。5. ハウス周りの排水対策
ハウス周りの排水対策を行い、基礎にゆるみが出ないようにしましょう。6. ビニールを外すべきかは慎重に総合判断
強風によりハウスのパイプが変形するよりは、事前に天井のハウスビニールなどを外して、ハウスの浮き上がりやサイドからのあおりを受けないようにするという判断も時に有効です。ただ、ハウスへの風の影響は微地形や風向、風の吹き方などにより変わるものなので、一概に効果的とはいえません。情報、経験から慎重に総合判断するようにしましょう。台風の日に外に出るなら、装備をしっかり固めて。
畑の台風対策
一般的に9月ごろから定植や種まきが始まりますが、最近では10月以降でも台風が上陸することが多くなってきています。秋以降の台風では強風により定植した苗の枝葉が折られたり、台風通過後に塩害が発生するといった被害が出やすくなります。防虫ネットで強風対策
台風の1~2日前までには定植した苗のある畝だけでも、防虫ネットトンネルで覆うようにしましょう。防虫ネットは台風による風の影響を抑え、通過後に虫が発生した際にも一定の防虫効果を発揮します。特にブロッコリーやキャベツなどの茎は折れやすいので対策をしっかり行う必要があります。台風の塩害対策
秋の台風は、海水からの塩分を多く含んだ状態で通過することがあり、沿岸部だけでなく内陸部でも塩害が発生するリスクがあります。塩害とは、作物の葉などに塩分が付着し、葉焼けなどが起こり正常な生育ができなくなってしまう現象です。動噴やポンプを利用して、台風通過後に散水できるように準備しておくようにしましょう。特に幼苗については低濃度の塩分でも影響が出やすいので、重点的に除塩するとよいでしょう。防風対策にはネットも有効。
支柱をうまく使って台風対策。
台風対策は実行が肝心!
台風対策についてご紹介してきましたが、私自身、実は対策を知ることよりも実行に移すことの方が高いハードルとなっています。6月の農繁期から、7~9月まで手のかかる夏野菜の管理、秋の作付け、除草など特に忙しい時期に対策を実行に移すタイミングがなかなかないというのが本音です。ただ、天気予報で台風が来ることがわかってから1~2日のうちにできる対策はしっかりとれるように、事前に何をすべきかを決めておいて、必要な資材などはハウスの近くに置いておくようにしましょう。また、台風シーズンが終わるごとに必要な台風対策を練りなおし、冬の農閑期を使って対策を実行するようにできるとよいでしょう。