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黄化葉巻病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)


トマトやトルコキキョウに発生する「黄化葉巻病」の感染しやすい時期や発生原因について説明します。黄化葉巻病は一度発症すると治療することができないので、感染後の速やかな対策、かからないための防除対策やおすすめの薬剤(農薬)など詳しく紹介します。
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黄化葉巻病におかされたトマトの株

出典:Flickr(Photo by :Scot Nelson)
黃化葉巻病(おうかはまきびょう)とは、芽先の葉が黄化して縮れ、株の生長が止まるウイルスが原因で引き起こす病気です。このウイルスは主にタバココナジラミによって媒介されます。黃化葉巻病の治療方法はなく、施設栽培でタバココナジラミが大発生してしまうと、作物が全滅してしまうこともあります。
そんな黄化葉巻病の症状と発見のポイントを押さえて、予防と早期発見、防除を心がけましょう。

黄化葉巻病の症状

「芽先の葉が縮れている」「芽先が黄色くなり、生長しない」などの症状が現れた場合は、黄化葉巻病を疑いましょう。

黄化葉巻病の症状

具体的にどのような症状になるのか説明します。

葉での主な症状

葉は緑色の部分がまだらに色抜けして黄化し、葉柄は内側に巻き込みます。

新芽での主な症状

芽先の葉は縮れて小型化します。

株全体での主な症状

株の生長は黄化した部分でほぼ止まってしまいます。

▼植物の病気の症状についてはこちらの記事もご覧ください

黄化葉巻病の発症原因

ベランダで栽培している黄化葉巻病におかされたトマトの苗
出典:Flickr(Photo by :Scot Nelson)
黄化葉巻ウイルス(TYLCV)を媒介するのは、主にタバココナジラミです。
タバココナジラミは春ごろから発生し、6~9月に発生のピークを迎えて、気温が下がる秋から冬にかけて減少していきます。タバココナジラミは温暖な気候を好み、凍結するような地域では越冬できず、施設内で冬を過ごすと考えられています。
名前 黄化葉巻病
分類 ウイルス
ウイルス名 トマト黄化葉巻ウイルス:TYLCV(Tomato yellow leaf curl virus )
媒介虫 タバココナジラミバイオタイプB(シルバーリーフコナジラミ)、タバココナジラミバイオタイプQ
発生時期 6~9月
※黄化葉巻ウイルスにはイスラエル系、マイルド系という系統があり、日本では両系統が分布しています。

黄化葉巻病ウィルスの伝搬

植物が黄化葉巻病のウイルスに感染すると植物内で増殖し、その植物をタバココナジラミが吸汁することで、ウイルスも一緒に体内へ移動します。体内にウィルスをもつ保菌虫となったタバココナジラミは、約1日間の潜伏期間の後、死ぬまで吸汁を続け、口針を通して次の植物に伝染し続けます。
※人の管理作業による汁液伝染、種子伝染、土壌伝染は確認されていません。
※タバココナジラミは経卵伝染はしないようです。

▼コナジラミ類のことならこちらをご覧ください。

タバココナジラミバイオタイプB・タバココナジラミバイオタイプQ

タバココナジラミ
出典:wikimedia
タバココナジラミの中でも「タバココナジラミバイオタイプB(シルバーリーフコナジラミ)」「タバココナジラミバイオタイプQ」という種類が、黄化葉巻ウイルスを伝搬しています。

バイオタイプB
日本に昔から生存しているタバココナジラミの種類とは違い、バイオタイプBは1980年代以降に海外から侵入し、1996年代に国内で初めて観察された黄化葉巻ウイルス(TYLCV)の媒介昆虫です。
バイオタイプQ
バイオタイプQは2003年ごろに九州で確認され、その後も生息域を拡大しており、それにより黄化葉巻病も九州から東海、東北地方へと感染が広がっています。


黄化葉巻病に感染する主な植物

黄化葉巻病は多くの植物に感染しますが、ここでは被害が重症化するトマト、ミニトマト、トルコギキョウについて紹介します。

トマト、ミニトマト

黄化葉巻病におかされたトマトの株
出典:Flickr(Photo by :Scot Nelson)
タバココナジラミはトマトやミニトマトでは葉裏に寄生し、多発すると排泄物によってすす病を併発します。

▼すす病のことならこちらをご覧ください。

葉での主な症状

葉の緑色がまだらに色抜けし、葉脈の間が黄化します。葉柄も内側に巻き込んでしまいます。

新芽での主な症状

芽先の葉は縮れて小型化します。

株全体での主な症状

節間が短くなって萎縮し、株の生長は黄化した部分でほぼ止まります。

果実での主な症状

病気が発生する前に着果した果実には影響はありませんが、発病後は果実は肥大せず落下して収量は減少します。

▼トマト・ミニトマトの育て方ならこちらをご覧ください。

トルコギキョウ(トルコギキョウ葉巻病)

トマトやミニトマトの栽培施設が近くにあると、保菌したタバココナジラミが飛来してくるため黄化葉巻病の発生が増加します。

葉での主な症状

葉が小さくなり、葉脈が隆起し、葉表を内側にして巻きます。

株全体での主な症状

節間が短くなり株が萎縮するため、黄化葉巻病に感染していないトルコギキョウに比べて全体的に小型化します。

黄化葉巻病が発生してしまったら?

黄化葉巻病ウィルスを保菌している株は、一見すると芽先だけに症状がみられますが、じつは全身にウイルスが蔓延しています。

株の抜き取り

放置すると伝染源になるためただちに抜き取ります。取り除いた株は圃場内外に放置するとタバココナジラミの温床となるため、埋め込むかビニール袋に入れて処分してください。

ハウス栽培終了後の処理

タバココナジラミが施設外へ大量に逃げ出すことを防ぐために、夏はハウスを40℃以上(ハウス内温度)になるように密閉し、5〜7日間蒸し込み処理を行って殺虫することをおすすめします。

▼蒸し込み処理のことならこちらをご覧ください。


黄化葉巻病予防に有効な予防対策

黄化葉巻病の予防は、主にタバココナジラミ対策です。

圃場で行う黄化葉巻病対策

農薬を使わないで行う予防対策を紹介します。

1. 圃場や菜園周りの除草

タバココナジラミは寄主範囲が広く、圃場や菜園の外の雑草にも寄生しているので除草を徹底しましょう。

2. 植物残渣の処理

圃場内外に放置された植物は、コナジラミの温床となりますので適切に処分します。芽かき、葉かき後の植物残渣(ざんさ)も放置せず持ち去りましょう。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。

3. シルバーマルチの利用

コナジラミは下から光が当たると、上下の感覚が分からなくなる性質があります。日光を反射させることで集団飛来を抑制するシルバーマルチを利用することがおすすめです。

▼マルチについてはこちらもご覧ください。

4. 防虫ネットの利用

苗床では防虫ネットを使用し、コナジラミの侵入を防ぎましょう。
施設栽培では、ハウスの開口部(天窓、側窓、出入口)に防虫ネットを張ります。
※目合いのサイズは0.4mmが理想的です。

▼防虫ネットについてはこちらもご覧ください。

5. 黄化葉巻病に強い品種の利用

近年、黄化葉巻病にかかりにくい品種の開発が進んでおり、抵抗性品種を栽培することが最も効果的な対策となります。
しかし、病気にかからないわけではなく「発病しにくい、症状が軽くなる」だけなので、周囲に抵抗性品種以外の株が植えられている場合伝染の可能性があるため、コナジラミ対策は通常通り行うことをおすすめします。

【品種の例】
・トマト:桃太郎ピース、桃太郎ホープ(タキイ種苗)など
・ミニトマト:TY千果、千果99(タキイ種苗)など


タバココナジラミから作物を防除する「農薬」

農薬を使用してコナジラミを防除しましょう。作物ごとに使用する農薬にコナジラミ類の登録があるか必ず確認してください。
また、散布は1回だけではなく、定期的に農薬の種類を組み合わせてローテーション散布することがおすすめです(以下のおすすめする農薬は、強い薬剤抵抗性を持つタバココナジラミバイオタイプQの卵、幼虫、成虫に効果があります)。
※農薬は地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。

▼ローテーション散布、薬剤抵抗性のことならこちらをご覧ください。

▼病気対策に欠かせない農薬散布のタイミングや、選び方・使い方のことならこちらをご覧ください。

ベストガード粒剤

ITEM
ベストガード粒剤
苗、定植時の使用で、栽培初期のコナジラミ対策に効果的です。

・内容量:1kg
・有効成分:ニテンピラム(1%)

ベストガード水溶剤

ITEM
ベストガード水溶剤
浸透移行性があり、葉表から葉裏に薬剤が移行します。

・内容量:100g
・有効成分:ニテンピラム(10.0%)

アファーム乳剤

ITEM
アファーム乳剤 100ml
多くの害虫に適用があるので同時防除が可能です。

・内容量:100ml
・有効成分:エマメクチン安息香酸塩(1.0%)


▼農薬を安全に使用するためにまずはこちらをご覧ください。

▼希釈方法や散布後の処理方法などそのほかの農薬のことなら農薬まとめをご覧ください。

黄化葉巻病の人体への影響は?

基本的に黄化葉巻病は植物の病気なので、触ったり食べたりして人に感染することはありません。一方、黄化葉巻病に激しく侵された農作物は、植物自体が病気に対抗して毒素を生成している可能性があるので(ファイトアレキシン、アレルギー原因タンパク質など)、人体に影響が無いとはいえず、食べるのはあまりおすすめしません。

黄化葉巻病対策に何より大事なのはコナジラミ対策

黄化葉巻病はタバココナジラミの中でも、主に「タバココナジラミバイオタイプB(シルバーリーフコナジラミ)」と「タバココナジラミバイオタイプQ」という種類によって媒介されるウイルス病です。これらのタバココナジラミの対策として、圃場回りの除草、ネットの展張などの予防的な農薬散布が効果的です。一度感染すると治療することができないので、徹底したタバココナジラミの予防対策を行いましょう。

紹介されたアイテム

ベストガード粒剤
ベストガード水溶剤
アファーム乳剤 100ml

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この記事の筆者:
rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。

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