目次
炭疽病の症状
「葉や茎に黒いあざのようなものができている」「全身が萎(しお)れて株元が黒っぽい」「黒い病斑の中にサーモンピンク色の粒が見える」などの症状が現れたときは炭疽病を疑いましょう。病斑部の特徴
湿度が高いと病斑の中心部分に黒い粒が見られたり、サーモンピンク色の粘質物(胞子塊)が生じたりすることもあります。葉や果実の病斑部の特徴
円形~不整形で灰白色~褐色の病斑が生じます。茎や枝の病斑部の特徴
黒褐色のややくぼんだ紡錘形の病斑を形成します。▼植物の病気の症状についてはこちらをご覧ください。
炭疽病の発症原因
炭疽病は糸状菌(カビ)が原因で発生する病気で、野菜、果樹など多くの植物のさまざまな部位に発生します。病名 | 炭疽病 |
菌名 | Colletotrichum属、Glomerella属 |
分類 | 糸状菌 |
発生時期 | 4~9月 |
胞子形成適温 | 20~27℃ |
発病適温 | 28℃前後 |
伝染源
雨や曇天が続く時期、湿度が高くやや気温が高い環境で発生しやすくなります。炭疽病の病原菌(胞子)は、風雨や灌水(かんすい)時の水はねで回りに飛び散ります。
※灌水(かんすい)とは、水を注ぐこと、植物に水を与えること。
一次伝染源
炭疽病に感染した落ち葉や苗、枝などで越冬した病原菌が、気温20℃超の湿度が高い環境(4月ごろ)で胞子をつくります。ニ次伝染源
さらに28℃前後になると胞子がよくつくられるので、感染要注意の時期となります。病斑部分につくられた胞子塊から胞子が飛び散り、周りに感染します。炭疽病に感染する主な植物
炭疽病は野菜類、花かき類など幅広く感染する病気です。ここでは、炭疽病が問題となっている主要な作物とその症状を紹介します。野菜類
野菜類ではイチゴ、キュウリ、エンドウマメ、ハクサイ、カブ、ニラなどに発生します。▼キュウリやハクサイの病気のことならこちらをご覧ください。
イチゴ
【葉柄・ランナー】黒色の紡錘形にやや凹んだ病斑(赤黒く見えることもある)が発生します。
【葉】
赤~黒い斑点や、円形~楕円形の不整形の病斑ができます。病斑部には小黒点状やサーモンピンク色の粘質物(胞子塊)が生じます。
【クラウン部分】
クラウン部分が侵されると株全体が萎れ枯死します。
イチゴが炭疽病か疑わしいとき
株元から葉や葉柄をちぎりとり、表面を水で濡らしてビニール袋に入れて2~3日室温に置くと、炭疽病の場合サーモンピンク色の胞子が現れます。
草花(観葉植物・多肉植物含む)
シクラメン、コスモス、トルコギキョウ、ベゴニア、シンビジウムなどに発生します。▼コスモスの育て方ならこちらをご覧ください。
シクラメン
【葉】円形~不整形のやや大型で褐色の病斑が生じます。
【花蕾・花柄】
黒い病斑部がくびれて枯死します。湿度が高いと病斑部分にサーモンピンク色の胞子塊をつくることがあります。
▼シクラメンの育て方ならこちらをご覧ください。
果樹・樹木
カキ、リンゴ、ナシ、コーヒー、マンゴーなどに発生します。カキ(柿)
湿度が高い新梢や果実の病斑部分にサーモンピンク色の胞子塊がつくられます。【新梢】
4~5月ごろ緑枝にくぼんだ紡錘形の黒色病斑が見られます。
【果実】
6~7月ごろ幼果では黒色の病斑が生じて落果します。
9~10月ごろ着色した果実では、ややくぼんだ円形で黒色の病斑が形成されると、早期に着色し熟果となって落果します。
炭疽病に有効な予防方法
炭疽病に有効な予防は「農薬を使わず」に圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と、「農薬」の使用で行います。2つの方法を組み合わせて適切な炭疽病の予防を行いましょう。※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のこと。
炭疽病を発症させない「農薬を使わない」管理方法
農薬を使わずに行う炭疽病の予防方法について説明します。1. 前作の残渣(ざんさ)の処理
炭疽病菌は植物残渣上で越冬し、伝染源となります。残渣は土中深くにすき込むか、圃場外に持ち出して処理します。※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。
2. 水はけの良い圃場づくり
湿度が高いと炭疽病の胞子がつくられてしまいます。圃場の湿度が上がらないように水はけの良い土づくりを目指します。畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良資材を投入して、効果的な土質改善を行いましょう。
▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。
3. 無病苗の使用
イチゴ炭疽病は感染苗が発生の原因となります。 親株及び畑へ定植する苗は無病の株を使用します。4. 灌水方法の見直し
炭疽病は水のはね上がりで感染が拡大するので、頭上からの灌水は要注意。株元灌水を心がけてください。ドリップチューブなど水はねの少ない灌水チューブやポリマルチで泥はねを予防することも効果的です。▼マルチについてはこちらをご覧ください。
5. 風通し
植え付け後は過繁茂に気を付けましょう。適度に風通しを良くすることで、植物の周りの空気を入れ替え、湿度を下げる効果があります。古い葉や傷んでいる葉は取り去りましょう。炭疽病の予防に効果的な「農薬」
農薬(殺菌剤)を使用して、より効果的に炭疽病を予防しましょう。1回だけではなく定期的に散布することがおすすめです。また、耐性菌の発生を予防するためにも、薬剤を組み合わせてローテーションで散布することをおすすめします。使用する薬剤に作物の登録があるか必ずご確認ください。※耐性菌とは、薬剤(農薬)に含まれる抗菌薬(抗生物質)が効かない菌のことです。
※農薬は地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。
▼殺菌剤やローテーション散布のことならこちらをご覧ください。
▼病気対策に欠かせない農薬散布のタイミングや、選び方・使い方のことならこちらをご覧ください。
アントラコール顆粒水和剤
アントラコール顆粒水和剤
炭疽病に高い予防効果があります。イチゴは育苗時に使用しましょう。
・内容量:500g
・有効成分:プロピネブ(70.0%)
・FRACコード:M3
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ジマンダイセン水和剤
ジマンダイセン水和剤
さまざまな作物に登録がある保護殺菌剤です。胞子発芽を阻害し、高い予防効果があります。
・内容量:250g
・有効成分:マンゼブ(80.0%)
・FRACコード:M3
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・FRACコード:M3
▼農薬を安全に使用するためにまずはこちらをご覧ください。
▼希釈方法や散布後の処理方法などそのほかの農薬のことなら農薬まとめをご覧ください。
炭疽病発見後の効果的な2つの対策(治療法)
炭疽病を発見してしまった際にはどうすれば良いのか、その効果的な対策を紹介します。1. 炭疽病発症後の被害部分の「除去」
発生が確認された場合は、ただちに取り去りましょう。除去したものは胞子が飛ばないように、ビニール袋に入れて圃場外に持ち去ります。また、発生が広がらないように圃場の環境を見直しましょう。古い葉が残っている場合は、さらなる伝染源となる可能性があるので、ただちに取り去りましょう。
2. 炭疽病の治療に効果的な「農薬」
効果的な農薬を使用して、早期に炭疽病を治療しましょう。ゲッター水和剤
ゲッター水和剤
予防効果と治療効果を併せ持ちます。予防から発生初期に使用すると効果的です。
・内容量:100g
・有効成分:ジエトフェンカルブ(12.5%)、チオファネートメチル (52.5%)
・FRACコード:10
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アミスター20フロアブル
アミスター20フロアブル
浸透移行性による優れた治療効果があります。
・内容量:250ml
・有効成分:アゾキシストロビン(20.0%)
・FRACコード:11
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・有効成分:アゾキシストロビン(20.0%)
・FRACコード:11
炭疽病の人体への影響は?
炭疽病の葉や果実を食べても人間に炭疽病が伝染ることはありません。植物の炭疽病と人間の病気である炭疽病は全く違う菌によるものです。一方では炭疽病に激しく侵された農作物は、植物自体が病気に対抗して毒素を生成している可能性があるので(ファイトアレキシン、アレルギー原因タンパク質等)人体に影響が無いとはいえず、食べるのはあまりおすすめしません。
▼病気が発生した作物は食べられるのかについてはこちらをご覧ください。
炭疽病に関するQ&A
炭疽病に関する、よくある疑問や質問にお答えします。Q. 酢を使って炭疽病を防ぐことができるって本当?
カビが病原となる炭疽病は、殺菌作用があるといわれる酢を散布することで、予防効果が期待できます。酢を水で50倍程度に希釈し、霧吹きに入れてまんべんなく吹きかけましょう。農薬のように効果は長く続かないので、こまめに散布するのがおすすめです。Q. 炭疽病は牛などの動物や人間も感染する?症状は??
牛などの草食動物は、草と一緒に土中の炭疽菌の芽胞(がほう)を食べてしまうことで感染することがあります。また、炭疽病にかかってしまった動物の肉を食べたり、毛に付いた炭疽菌を吸入したりすると、人間も感染してしまいます。症状は感染経路により、皮膚に潰瘍(かいよう)ができる異常(皮膚炭疽)や、発熱・咳・呼吸困難などの呼吸器異常(肺炭疽)、嘔吐・腹痛・下痢などの消化器異常(腸炭疽)などが起こります。現在、先進国では予防接種や消毒が普及しており、日本でも炭疽病はまれな病気となっています。
Q. スプレーで手軽に炭疽病対策をしたい!
市販の殺菌剤にはスプレータイプもあります。希釈する必要がなく、そのまま吹きかければ良いので便利です。 モスピラン・トップジンMスプレー
炭疽病のほか、うどん粉病や葉かび病などの病気、アブラムシやコナジラミなどの害虫の防除ができます。
・内容量:1000ml
・有効成分:アセタミプリド・チオファネートメチル
・内容量:1000ml
・有効成分:アセタミプリド・チオファネートメチル
葉っぱに茶色の斑点が発生し、ネットで調べたところカビが原因かもしれないと判明しました。試しにこちらを購入して使用してみたところ、治癒しました!感謝です!!!
カビが発生した葉っぱは取り除きました。
出典: Amazon
炭疽病対策に何より大事なのは早期発見
炭疽病は多湿で発生しやすい病気です。まずは環境を見直しましょう。春、秋で雨が長引き、気温が高い時期は炭疽病の兆候がないか圃場を注意して観察しましょう。発病を確認したら直ちに発病株を取り去ります。農薬の予防散布も効果的です。紹介されたアイテム
アントラコール顆粒水和剤
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